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「“シャブと注射器”が焼き芋の屋台で売られていた」24時間覚醒剤が買えた街・西成“元売人の告白”

「西成で生きる この街に生きる14人の素顔」#2

2021/05/29

“人が最後に流れ着く街”と称される大阪・西成で暮らす人々は、普段どんな生活をしているのか――。西成の街を徹底取材し、労務者に仕事を斡旋する手配師、非合法薬物を売りさばいた元売人、簡易宿泊所“ドヤ”の管理人、元ヤクザの組長、さらには元シャブ中の男性までインタビューしたフリーライター・花田庚彦氏の著書『西成で生きる この街に生きる14人の素顔』(彩図社)が版を重ねている。

 西成の人々の素顔と本音に迫った本作から、一部を抜粋して転載する。(全3回の2回目/#1#3を読む)

◆◆◆

ついに辿り着いた“西成の裏事情”――元売人・太田氏

 24時間覚醒剤が買える街として悪評が高かった大阪・西成。

 太子の交差点や線路脇、コインロッカー前などにいつも売り子は立っていた。筆者の知る限り最盛期には30~40人以上は立っていただろう。それら売り子は立つだけでなく、一時期はあるドヤを根城に売買を行っていた。

 そのドヤは名前も経営者も変わっているが、かつては全てのフロアに覚醒剤関係者が部屋を借りて売買をしていた。そこは抗争をしている相手組織が売買していても見逃されていたような地域である。“覚醒剤に代紋は無し”という言葉がある通り、覚醒剤のシノギは抗争中も平然と敵対組織と行われていたのが西成だ。

太田氏 ©️花田庚彦

 筆者は西成の裏事情に詳しい太田氏という30代後半の人間を紹介してもらい、西成の裏事情を詳しく聞いた。太田氏は裏事情に詳しいが、今はそれらで培った人脈を生かしてまともな仕事をしているという。

 彼が語ったその中には、今まで語られなかった驚愕の事実もあったのだ。

西成のシャブ事情「0・5グラムで1万くらい」

――西成のシャブ事情を詳しく教えてください。

「ぼく、そんなに関わりないんですけど、売買の噂はチラホラは聞きますね」

 知り合いの紹介で会った太田氏だが、初めて会う筆者に警戒をしているのが分かる。それは当たり前であろう。

――いまも24時間立っていますか?

「いまは売り子をする番もいないので24時間は立ってないですね」

西成の至るところで見かける「覚せい剤を売るな!」のポスター ©️花田庚彦

――今、1グラムいくらですか?

「値段的なことで言うたら、グラムでは誰もさむがって(逮捕されるのを恐れて)買いに走らんからね。今は捕まったら罪重いやろ。だからまとめて買う人間はホンマに少ないんですわ。ぼくが聞くのはハーフ、つまり0・5グラムで1万くらい取ってるのとちゃいますか」

 警察に逮捕された場合、末端価格でグラム6万円くらいで計算されるが、西成の裏事情ではハーフで1万円、つまり1グラムで買ったら倍の2万円であり、危険性は高まるがその分利幅も大きい。

 あくまで警察発表の額ではあるが、ここには大きな開きがある。

――ハーフで1万円くらいですか?

「そうやね、それ以上出したら誰も買わへんしな。ここらじゃ」