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サラリーマン家庭でも増えてきた「生前贈与」を封じたい…改正に動く、財務省の“言い分”

2021/05/27
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財務省は「老老相続」を問題視している、と言うが…

 日本では高齢者への資産偏重が進んでいる。

 財務省が税制改正に向けて2018年10月に示した資料によれば、個人の金融資産約1700兆円のうち、60歳以上の人がその約6割(1000兆円)を保有するに至り、この20年間で倍増した。

 また高齢化の進行により、2016年には、死亡時の年齢が80歳を超えている親が7割に達した。80歳を超えた親の資産を50歳以上の子供が相続するといった、高齢者が高齢者に財産を相続するケースが増えている。

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 財務省はこの現象を「老老相続」という言葉で表現し、「相続による若年世代への資産移転が進みにくい状況となっている」と問題視している。子育てや住宅の購入など支出が多い30代~50代を過ぎた後に財産を相続しても、有効に活用されないからだ。

 昨年12月の与党の税制改正大綱でも、経済を活性化するために「資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要」として検討課題に挙げられた。ここで出て来たのが「相続税と贈与税の一体化」だ。生前贈与には贈与税を課さず、相続時に、生前贈与された分も加えて相続税を課し、財産の贈与時期を選択できるようにする方向が示されている。

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 その具体化は進んでいないが、先行されると見られるのが「3年ルール」の延長だという。

 親が亡くなり相続が発生すると、過去3年分の贈与は相続財産に加算して相続税の課税対象になると定められている(相続税法第19条)。贈与税を払って贈与していても、年110万円の非課税贈与を続けていても課税され、生前贈与の効果は消失してしまう。

 3年分の生前贈与を認めないのは、親の死を前にした駆け込み贈与により、相続税の節税を防ぐためとされている。生前贈与は「早めに着手するべき」と言われるが、その理由の1つはここにある。