5月21日に封切られた映画『いのちの停車場』が、6月1日より東京・大阪の映画館でも公開。緊急事態宣言に伴う休業要請が一部緩和され、封切りから約10日遅れての“全国公開”となりました。

「週刊文春CINEMA!」では、主演の吉永小百合さんと広瀬すずさんによる対談「失われていくいのちに寄り添うこと」を掲載。映画の全国公開を記念して、同対談の全文を特別転載します。

(構成=佐野亨)

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©2021「いのちの停車場」製作委員会

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吉永 私は、『怒り』という映画を観て、難しい役を演じられたすずさんに憧れていたんです。だから今回一緒にやれて本当によかった。

広瀬 とんでもないです! 私こそ共演の機会をいただけて本当に嬉しいという気持ちでした。現場のスタッフや共演者の方々も、「吉永さんの作品だから」という熱量がすごかったです。

吉永 とても難しい題材を描いた作品であると同時に、私にとってドクターの役は初めてだったので、どのように演じればよいか非常に悩んだんです。患者さんとのかかわり方、すずちゃん演じる看護師をはじめ周りの人たちとのチームワーク……そういったことに思いを巡らせながらシナリオを読みました。

広瀬 物語のなかでいくつものいのちが失われていく様子が描かれているので、それとどう向き合うのか、私も最初は想像がつきませんでした。ただ、コロナの影響で医療の現場が大変な状況になっているいま、この映画をつくることの意味は大きいんじゃないか、と。

週刊文春CINEMA!

吉永 私は母が体を悪くしたとき、入院を拒んで家にいたので、在宅医療の先生に診ていただいたのね。ただ、在宅医療が具体的にどういうものかは、この映画に参加するまでほとんどなにも知らなかった。

広瀬 私もまったく未知の世界でした。クランクイン前に監修でついてくださった先生からレクチャーを受け、模擬体験をして初めて「こんな感じなんだ」と思いました。

吉永 本来であれば、病院へ行って、医療関係者の方々にお会いして話を聞いたりするところだけど、今回はコロナの影響でそれができなかった。でも、実際に在宅医療の先生が撮影所にいらして、丁寧に教えてくださったからとても有難かったですね。さらに私が演じる白石咲和子は、最初は救命救急医だったという役なので、救命救急の最前線におられる先生も指導してくださった。