コロナ禍で混沌とした状況に陥るスーパーマーケット
言いがかりに近いクレームは日常茶飯事のようだ。また、昨年から続くコロナ禍でナーバスになっている客も増えている、と三井さん。
「外は晴天なのに長靴を履いてビニールの手袋をして、長いアームカバーを装着。帽子を目深にかぶって大きなマスクをしていたお客さんは、買い物中も汚いものを触るように指先で商品をつまんでカゴに入れていました。日々その商品に触ってる私たちは、どう思われてるんでしょうね。過敏な人がいる一方で、レジ前に設置された飛沫防止のビニールを『邪魔だ!』と言って外そうとするおじいさんもいて……この1年、スーパーはかなり混沌とした状況です」
暴言を吐く客はもってのほかだが、客による迷惑行為も後を絶たない。セルフレジを導入している三井さんのお店では、レジで会計をせずにカゴに入れたまま店外に出る“カゴ抜け”被害が続出している。
「先日、大量のビールとお米がカゴ抜けされてしまったんです……。そのときの損害額は5万円近く、かなり高額です。そのほかでも、レジ袋が有料になってから会計前の商品をマイバッグに入れて会計せずに出ていく万引きも増えていますね。万引きではないけど、無料の半透明のビニール袋をロールの1/3持ち去る人も見かけました」
人材不足を補うために導入されたセルフレジや、マイバッグの推奨によって万引き問題も深刻化しているようだ。前出の真田さんは「ときにはお褒めの言葉をもらうこともあるが、泣きたいときもある」と話す。
「日々いろんなことが起きるのでおもしろい部分もありますが、さすがに暴言を吐かれたら心が折れます。なので『なんでこんな理不尽なことで私が怒られなきゃならないの!』と言って、辞めていく人も多いです。だからといって、ネットスーパーを使われると店舗の売上につながらなくて店の存続にも関わるし、結局“お客さま第一”にならざるを得ないんですよね」
「お客様は神様」なんて言葉があるが、本物の神様は店員に横柄な態度を取ったり、クレームを入れたりするだろうか。