だから私はいま描きたいことはないけど、描く人になるために、かたちから入ろうと。「まず手足を動かせ」って言うじゃないですか。何がやりたいかわからなくても、とりあえず手足を動かしているうちに、なりたい方向に自分を持っていくことは不可能じゃないはずだと思ったんです。
といっても、ここまでこれたのはほんの数ヶ月前のこと。それまでは若い子に混じって講座でデジタルの勉強をしたけど全然身につかなかった。でも友だちと一緒にタブレットを持ち寄ってやっていくうちに楽しくなってきて、いつの間にかできるようになったんです。
これは物理学の先生から聞いたことだけど、あのアインシュタインですら仲間のおかげで大成できたところがあるらしいのね。世界一の天才ですら仲間が必要なら、凡人の私なんか仲間が必要に決まっとるわ、としみじみ感じました。
女としてのありようが変わってきて、見えてきた世界
――4月から始めたTwitterでも4コマ漫画をアップされていますね。
倉田 ちゃんと漫画で評価されたいんです。手を広げてコメンテーターとかコラムニストとかいろいろやったのは良かったけど、漫画で評価された実感がなくて。それに、コメンテーターほどあいまいであやふやで頼りない肩書ってないですよ。そんなものは何のよりどころにもならない。「片手間でやってる」からこそ意味があるものですから。
私は読者としても漫画が大好きだから、読者が本当に喜ぶ漫画を描きたい。でも、ずっとそれをしてこなかった。いま50代に向けて、「子どもが欲しい」という欲望のかわりにそんな気持ちが芽生えてきたんです。
無人島に漂着したら「生きる」とか「水を確保する」が目標になるように、環境によって目指すものは変わる。私も女としてのありようが変わってきて、子どもが生めなくなる年齢になって見えてくる世界があるんですね。
30代までは恋愛が楽しかったし、描きたいことは恋愛だった。でも今は恋愛市場の渦中に自分がいないから、今度描くものはまた違うものになるんだろうなと思ってます。
【続きを読む】「70、80まで働くことも想定済み」50歳目前の漫画家・倉田真由美が語る“フリーランスの究極の夢”
写真=深野未季/文藝春秋
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