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「40代はサボってしまった。でも“定年退職”したくない」漫画家・倉田真由美が語る、50歳目前の心境

「40代はサボってしまった。でも“定年退職”したくない」漫画家・倉田真由美が語る、50歳目前の心境

倉田真由美さんインタビュー #1

2021/06/13

子育て漫画を描かない理由

――いつも優先順位を考えて行動されている?

倉田 なんとなくね。意識してたわけじゃないけど、やっぱりそこに向かって行くんだよね。そりゃあ私だって結婚するなら金持ちの相手の方がよかったよ。でも、欲しいものは何個も手に入らない。

 たまたま好きになった男は破産寸前のバツ3で、親から歓迎されないタイプの男だった。でも子どもを作ることが一番だった自分にとっては全部、優先順位が下のことだったからしょうがないよね、と。

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――巷には子育て漫画もたくさんありますが、倉田さんはお子さんをあまり作品の題材にしていないですよね。

倉田 全然描く気しない。子どもは超かわいいし最高だけど、私はいつまでたっても子どもを赤ちゃん扱いするママで、ずーっと「バブバブ」って感じで接してます。

 

 でもそれはあくまで私だけのもので、「子どもって最高よ~」と周りに言うつもりもなくて。たとえば寿司好きな人もいればそうじゃない人もいるわけで、その中で「寿司って最高!」と言い続けることに意味を感じないんです。

 もちろん言いたい人は言えばいいし、私も子育て漫画は読みますけど、自分はそこに注力したくない。そもそも私は子どもを「バブバブ」ってかわいがるだけだから、『だめんず』みたいに題材として突き放して見て面白く仕立てることができないんですよ。

描く人になるために、かたちから入ろうと

――では「描きたいものはないけど、描く人になりたい」という今のモチベーションはどこからくるのでしょうか?

倉田 『だめんず』の後に描いた『もんぺ町 ヨメトメうぉ~ず』って漫画があるんですけど、自分でもかなり自信があったのに、全然売れなかったんです。『だめんず』よりも時間をかけて描いたのにこの程度の評価かと落ち込んで、燃え尽きた感がありました。44歳のときのことです。

 

 重い腰を上げてペンタブ(デジタル作画に使うツール)を買ったのが2年前のこと。デジタルで漫画が描けるようになりたい、前に進みたい一心でした。そうしたら42歳の女友だちが、「私も漫画家になりたいんですわ」と言って、一緒にデジタル作画の勉強を始めたんです。

 元ギャルのその子はなんの実績もない素人だけど、「描くの楽しいっす」とか言いながら毎日毎日描き続けて、ちゃんと1作描き上げた。コロナで収入もなくなったのにすっごくキラキラしてたのも眩しくて、「この人みたいになりたい」と強烈に思ったんです。