新しい役をもらうときも、果たして自分にできるのかどうか、いつも不安になってしまうという。不安なので、ドラマや映画の撮影前は何冊も台本を持ち歩き、家でも枕元に置いて、常に読めるようにしてきた。しかし、毎回不安を感じたり、自分で満足いかないことがあっても、仕事をやめようと思ったことは一度もない。子供のころから、水泳だけでなく、ピアノなどいくつも習い事をしながら、どれも途中で投げ出すことはなかったので、そこで培われたものではないかと本人は話している(※5)。
休養を経て「人間・深田恭子」としての活躍に期待
自分の出演作品も必ず何度か見直し、話の流れの確認などをするという(※2)。適応障害の原因はストレスとされるが、ひょっとすると、どこまでも仕事に真摯であることが知らず知らずのうちに彼女の心身に負担を与えていたのかもしれない。ストレスという言葉さえ口にしないようにしていたというから、なおさらだ。昨年11月の雑誌記事では、《『仕事のストレス解消法はなんですか?』ってよく聞かれますが、お仕事の現場では、たくさんの方が自分のために動いてくださっています。それなのに『仕事=ストレスで、解消するべき悪いもの』っていう前提がすごく嫌な感じがして…。もしストレスを感じるなら、自分がちょっと疲れているだけだなって思うようにしています》と語っていたが(※7)、さすがにこれを続けていたら、どんなに忍耐強くても参ってしまうのは無理はないだろう。
深田の努力や周囲への気遣いは、一緒に仕事をする人たちにはよく知られるところであった。それだけに、以前から心配する声もあった。たとえば、『ヤッターマン』の三池崇史監督は、彼女の写真集のなかで、「妖怪」と独特の表現を用いながらこんなメッセージを贈っていた。
《「妖怪には年齢はありません」と京極夏彦さんに教わった。彼女を見ているとそれはホントだと思う。でも、それは見えない所での努力の賜物かも知れない。妖怪は妖怪なりに、色んな事を我慢しているのではないだろうか……。辛くなったら人間に成り下がればいい。その方が、今より更に素敵になれると思う。人間・深田恭子の誕生を心待ちにしています》(※3)
「辛くなったら人間に成り下がればいい」。まさにいま、同じように思っているファンが大勢いることだろう。
昨年のステイホーム期間中は、珍しく次の仕事にまだ入っていなかったので、台本も持たず、色々と考えたり、逆に何も考えないですごしたり、自分のことを見つめ直したりと、ゆっくりすごすことができたという。彼女にとって、そんなことは人生で初めてで、《あえて新しいことは何も始めず、無になれたことがすごくよかった》とか(※7)。今回の休養期間も、人生2度目の長期休暇として、彼女にはせいぜいゆっくりすごしてほしい。そして復活の暁には「人間・深田恭子」として新たな活躍を見せてくれることを、心から祈りたい。
※1 『週刊プレイボーイ』2020年11月2日号
※2 『with』2020年1月号
※3 深田恭子写真集『Blue Moon』(ワニブックス、2012年)
※4 『週刊文春』2010年9月30日号
※5 『婦人公論』2019年7月23日号
※6 『週刊ポスト』2019年7月19・26日号
※7 『FLASH』2020年11月17日号