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2021/06/11

主人公はどこに帰り、誰がそれを「おかえり」と迎えるのか

 目が離せないのは、NHKが清原果耶を主演に立てている点だ。今世紀朝ドラ最高視聴率を保持する『あさが来た』の朝ドラデビューから始まり、ドラマ初主演作で数々の賞を総なめにした『透明なゆりかご』、記念すべき100作目の『なつぞら』でのシークレットゲストと、NHKは常に清原果耶という、映画界が注目する若い才能を決定的な場面で投入してきた。

 映画『まともじゃないのは君も一緒』ではポーカーフェイスからのコメディもみごとにこなすオールラウンダーの清原果耶だが、出演歴を見ればそのメインフィールドは重厚なヒューマンドラマであることが分かる。

 NHKにとって清原果耶は作品のクオリティを支える絶対的な切り札であり、彼女を客寄せの見せ札や数合わせの捨て札に使ったことは過去一度もないのである。NHKが清原果耶という切り札を切る時は、そこに勝負を賭けた作品があるということなのだ。 

『おかえりモネ』はその清原果耶と、『透明なゆりかご』の脚本家、安達奈緒子が再びタッグを組むオリジナル脚本になる。

 周囲を固めるキャストは、浅野忠信はじめ驚くようなベテラン名優に加え、同世代の若手にも恒松祐里、蒔田彩珠といった映画界で高く評価される俳優達が並ぶ。人気グループKing&Princeの永瀬廉は『弱虫ペダル』での演技も素晴らしかったが、今回はオーディションから役を勝ち取り、別人のように爽やかな青年を好演している。

 前作『おちょやん』も俳優陣の演技力が高く評価されたが、今作も明らかにヒューマンドラマを想定した『演技力シフト』の布陣を敷いている。今は凪いだ海のように静かな物語が、どのように色を変えるかまだ誰にもわからないのだ。

清原果耶(第44回エランドール賞授賞式にて) ©AFLO

 4日の放送で震災の記憶をふりかえる映像のあと、主人公百音は故郷の海を再び見つめる。百音の前に広がる美しい海は、かつて津波となって東北を襲い、人を殺した海である。頬を撫でる優しい海風は、かつて火の粉を巻き上げて気仙沼を焼いた、人を殺す風だ。この物語はそこから始まる。

 海の音を読み、風の声を聴く気象予報士をめざす主人公が最終回でどこに帰り、誰がそれを「おかえり」と迎えるのか、物語の行方を見守りたいと思う。

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