やはりこの会社に株式上場の資格はない。さらに言えば、我々が暮らしているこの国は、そもそも資本主義国家と呼べるのか。そんな感想すら覚える衝撃的な報告書である。
東芝は6月10日、第三者委員会による報告書を公表した。この第三者委員会は、去年7月に開催された定時株主総会が「公正に運営されなかった」と主張する株主が選任した弁護士によって構成されていた。
委員会は「株主総会は公正に運営されなかった」と結論づけた
問題の株主総会では東芝が経産省と結託し、東芝株を保有する複数の外資系投資ファンドに対して、東芝の経営陣にとって都合の悪い株主提案を見送ったり、こうした株主提案に賛成しないよう圧力をかけたりした疑いが持たれていた。
第三者委員会が東芝に提出した報告書は120ページに及ぶ。冒頭で触れたようにその中身は衝撃的だが、まずは報告書の「結論」をご覧いただきたい。
以上のとおり、東芝は、本定時株主総会について、経産省といわば一体となり、エフィッシモ(筆者注:シンガポールの投資ファンド)の株主提案権の行使を妨げようと画策し、3D(:同)の議決権行使の内容に不当な影響を与えようと画策し、さらにHMC(:ハーバード大学の基金)についてはその議決権全てを行使しないことを選択肢に含める形で投票行動を変更させる交渉を行うようM氏に対して事実上依頼した。よって、本定時株主総会が公正に運営されたものとはいえないと思料する
第三者委員会は、4月に辞任した車谷暢昭前社長ら9人の東芝幹部に延べ30時間ヒアリングし、彼らがやりとりした社内メールのフォレンジック(消去されたデータの復元)や携帯電話に残されたメールなどを調査した。その結果、委員会は「株主総会は公正に運営されなかった」と結論づけたのだ。前代未聞と言っていい。
ちなみにM氏とは、当時経産省参与だったGPIFの元最高投資責任者、水野弘道氏である。水野氏には、東芝の株主であるハーバード大学の基金に対し「議決権を行使すると改正外為法の調査対象になる」と圧力をかけ、議決権行使を見送らせた疑惑が持たれている。