全国ネットの番組を多数抱え、天下を取った芸人「千鳥」。その関東初の冠番組として2014年に放送を開始したのが『いろはに千鳥』(テレビ埼玉)だ。地方の独立系放送局であるテレビ埼玉の深夜番組だが、現在では全国各地25局で視聴できる。「ダイ山本」と「のぶ小池」の絶妙なユルさと鋭い視点で、年々ファンが増えているロケ番組である。

2021年6月某日、5本目の収録に臨む千鳥。そろそろ疲れも出てくるころ。

『いろはに千鳥』では埼玉県を中心に、マニアックな会社や工場、お店などを大悟とノブが巡る。予算や多忙な千鳥のスケジュールの都合で、1日のロケで8本分の撮影をするという過酷スケジュールが、番組を語るうえで欠かせない要素となっている。

 逸話に事欠かない『いろはに千鳥』を支えている御三方、番組総合演出の岩津正洋氏、番組プロデューサーの馬場省吾氏、出口雅史氏に制作秘話をうかがった。(全2回の1回目/後編に続く)

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計算間違えてて4本撮りだと予算ハマらなかった

――『いろはに千鳥』と言えば、30分の番組を1日で8本分撮影することもあるという、驚異的なスケジュールのロケが、番組の代名詞のようになっています。こういった制作体制は番組スタート時から決まっていたのでしょうか。

岩津 いえ、まったくそんなことはありません。シーズン1のときは1日4本撮りだったんです。ただ、シーズン2がはじまる前に、当時の吉本興業側のP(プロデューサー)から、「計算間違えてて4本撮りだと予算ハマらなかった」と告げられまして。完全に予定外で、シーズン2から1日7、8本撮らざるをえなくなりました。

総合演出の岩津正洋さん。『イベンジャーズ』の頃から千鳥と仕事をしてきた 

馬場 もうベースからミスってたんですね……今でこそ、千鳥さんのスケジュールを抑えられるのが2ヶ月に1回なので、8本撮るしかないんですよ。ただ、僕と岩津さんは千鳥が東京進出したばかりの頃(2013年)に、BS日テレの番組でも千鳥さんと仕事してましたし。岩津さんは特に、千鳥さんとの関係性は出来上がってましたよね。

岩津 僕がディレクターを担当した『イベンジャーズ』(BS日テレ)という番組で千鳥がMCをやってくれてたんですよ。

馬場 千鳥さんにとっても、『いろはに千鳥』が初めて関東で持てた冠番組だったこともあって、8本撮りというスケジュールの過酷さよりも嬉しさが勝っていたのかもしれません。

出口 そもそも番組が立ち上がったきっかけは、2013年にテレビ埼玉がお付き合いのある芸能事務所や番組制作会社に企画公募をしていて、岩津さんからご提案いただいたのが『いろはに千鳥』だったんです。

岩津 吉本で千鳥を売り出そうという動きがあった時期だったので、自分が一から企画書を作って、テレ玉で通してもらいました。