千鳥の関東初の冠番組として、2014年に放送開始したロケ番組『いろはに千鳥』(テレビ埼玉)。全国ネットの番組を多数抱える千鳥が、地方の独立系放送局であるテレビ埼玉のレギュラーを今も続けている。
埼玉県を中心とした関東エリアを、「ダイ山本」と「のぶ小池」が巡る『いろはに千鳥』は、マニアックな会社や工場、お店などを訪れ、一般の視聴者と交流するスタイルで人気を獲得。2020年以降はコロナ禍でロケが難しいものの、以前は1日8本撮りという過酷なスケジュールの撮影で話題を集めた。
『いろはに千鳥』を支えている番組総合演出の岩津正洋氏、番組プロデューサーの馬場省吾氏、出口雅史氏に、撮影秘話や千鳥二人の番組愛などについて聞いた。(全2回の2回目。前編を読む)
千鳥の二人には台本を渡さず、一切内容を教えない
――『いろはに千鳥』は大悟さんとノブさんのロケが人気です。千鳥のお二人の瞬発力ある笑いをストレートに伝えるのは、当初からの狙いなんでしょうか?
岩津 もちろん狙いです。千鳥さんの生のリアクションを見せたくて、打ち合わせナシのロケスタイルを考えました。『いろはに千鳥』のこだわりとして、大悟さんにもノブさんにも台本は渡しませんし、撮影が始まるまでロケ先の情報も撮影の内容も一切教えてないんです。
馬場 本当にそこは徹底してると思います。僕はプロデューサーという立場なので、撮影の合間に千鳥さんと軽く雑談を交わす事はありますけど、岩津さんはカメラが回っていない時は、ほとんど千鳥さんと会話してないですもんね。
岩津 ロケの内容がバレたくないので(笑)。ロケ地に着いて撮影をスタートして、2人に向けてカンペを出す。その時点で千鳥さんは初めてそこがどういう場所で、何をするのかというのを知っていくんです。でも完全に情報をシャットアウトしてロケをはじめるのに、千鳥さんは こちらの“仕掛け”に必ず反応するし、僕が想定している2倍、3倍以上に面白くしてくれるので、本当に凄いなと毎回驚かされてます。オンエアと同じように面白くスムーズに現場も進んでいく。これが出来る芸人は千鳥以外にいないんじゃないかとさえ思いますよ。
馬場 千鳥さんが知っているのは、その日、何本撮りかっていう事ぐらいです(笑)。岩津さんのカンペで、この回は何をするのかを初めて知るから、素が出るんだと思います。もちろんスタッフ側はスケジュールをきっちり組んでいますけど、わざと教えない。今のテレビでは、なかなかないストロングスタイルだと思います。
――一般的なロケ番組は、演者のみなさんに台本を渡し、全体の流れを事前に説明します。
馬場 『いろはに千鳥』のカンペは、A3用紙に台本をプリントアウトしパラパラめくっていく形なのですが、それが“岩津フォーマット”みたいな感じですね。さすがに番組がシーズン1の頃は台本みたいなものを渡してたと思うけど、岩津さんが途中から、千鳥には台本渡さないほうがいいって判断したんです。
出口 あの膨大なカンペだけでも、毎回作るのは大変だろうなと思って見ています。
馬場 ゲストが来る事も千鳥さんには知られないように徹底してるので、ゲストと会わせないように、けっこうスタッフは苦労してます。ともかく千鳥の初見のリアクションをもらうことを、めちゃくちゃ大事にしてます。