YouTubeは全世界で月間20億人以上が利用している(2020年3月)、巨大なソーシャルメディアだ。日本国内でも月間6000万人以上が利用しており、テレビの視聴率の低下とは対照的にユーザー数は年々増えている。

『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)などのテレビ番組に携わり、現在は「しもふりチューブ」などのYouTubeチャンネルにも参加している放送作家、白武ときお氏。白武氏の著書『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)から一部を抜粋し、テレビとYouTubeのメディア特性の違いから、これからのエンターテイメントについて考える。

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テレビとYouTubeの違い(いまのところ)

 YouTubeとテレビには、メディアとしてどのような違いがあるのかよく聞かれます。いまの時点ではたくさん違うところがあるけれど、もしかしたら、今後どんどん近づいていくかもしれません。

 まずは構造の違いについて比較してみます。

 テレビの強みは、電源を入れればなにかしらの番組が流れていて、しかも6つのチャンネル数に選択肢が絞られていること。ザッピングする人もたくさんいるので、偶然視聴されるチャンスも多くあります。

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 YouTubeは、見たいときに見たいものを楽しめるシステムですが、最初のきっかけが必要です。作り手の立場からすると、YouTubeのチャンネルは視聴者に能動的に検索して探してもらい、見つけてもらう必要があります。動画をクリックしてもらうために、タイトルやサムネイルを工夫したり、あるいはSNSなど別の場所で話題を作ったりしなければなりません。YouTubeには急上昇動画を一覧で見せてくれるページがあるので、そこのランクインを目指すのもひとつの手です。

スポンサーが枷にもなるテレビ番組制作

 テレビでは視聴率が1%だとしても、膨大な人数が見ていることになります。ですから、初見の視聴者でもわかりやすいように作るのがセオリー。

 YouTubeも丁寧に作っている方はいますが、テレビに比べ、「わかる人にだけ向けて作る」ことがやりやすい点が特徴的です。

『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)

 テレビには膨大なスポンサーがいます。スポンサーのお金で番組を制作しているので、いかにCMを見てもらうかということが重要になる。だから「わかる人にだけわかればいい」「数字よりも面白いことを優先する」というスタンスでは、なかなかうまくいきません。視聴者との共通言語が獲得できていると信じて、余計な説明をはぶいて見せるということに、なかなか踏み切れないのです。

 一方、YouTubeは自分たちで勝手に作って、勝手に配信しているので、YouTubeのルールを守った内容であれば、それが面白くなくても、わかりにくくても、数字をとれなくても構いません。

 だからこそ、自分たちが好きなことをフルスイングで視聴者に届けることができるのです。