パソコンやスマートフォン、タブレットなどの普及に伴い、テレビの視聴率は右肩下がりだ。1997年には70%を超えていたゴールデンタイムの視聴率も、2019年には60%強まで落ち込んでいる。
YouTubeやNetflix、Abema TVのような動画配信サイトが台頭してきている現在、テレビ番組の製作スタッフには、インターネットを活用するリテラシーが必須になる時代が来ているかもしれない。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)や「しもふりチューブ」などに携わる放送作家、白武ときお氏の著書『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)より、一部を抜き出し、紹介する。
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テレビ局の課題はコンテンツメーカーになる覚悟があるか
章のはじめに、これからYouTubeとテレビは差がなくなっていくかもしれないと書きました。
民放キー5局は、2020年秋からテレビ番組を放送と同時にインターネット配信する準備をしています。これは、NHKが同年3月1日に開始したネット同時配信サービスの「NHKプラス」に追随するもので、テレビ離れをしているとされる若者層を中心に、スマートフォンなどのデバイスで広く番組を見てもらうことを目的としているそうです。
テレビ以外のデバイスでの視聴を前提とするようになれば、もちろんテレビの作り方にも変化が出てきます。
たとえば、「テレビのスタイルで制作はするけど、配信先はYouTube」ということも十分にあり得ます。
現状のYouTubeでは、チャンネルそのもののファンというより、そのチャンネルをやっている個人やグループにファンがついています。たとえると「千原兄弟」というコンビに人気がついているという状態。
ですが、「ジュニア小籔フット」のような形で、仮に「にけつッ!!チャンネル」や「すべらない話チャンネル」といった芸能人同士の座組みや番組単位でのチャンネルが成立しはじめれば、YouTubeのなかにテレビ番組のようなものがたくさん存在する未来がやってくるかもしれません。
既存の大きなプラットフォームを利用するメリット
すでにYouTuberでは、はじめしゃちょーは自分のチャンネルのほか、数人の仲間とやっている「はじめしゃちょーの畑」を持っていますし、東海オンエアのしばゆーさんは、パートナーのあやなんさんと「しばなんチャンネル」を配信しています。
今後、芸能人はテレビのレギュラー本数のように、YouTubeのレギュラーチャンネルをいくつ抱えているかが、人気のバロメーターになってくるかもしれません。
芸能人たちが自前で動画を配信できるようになると、テレビ局はなんのためにあるのか? という疑問が生まれます。
放送免許をもっているということは、いろんな人に向けて電波を流せるということではあるものの、リモコンにNetflixやABEMA、Huluなんてボタンがつくようになってくれば、多くの選択肢のうちのひとつにしかすぎなくなります。
そうなったときに、どこで戦うかといえば、結局のところは知的財産を開発しないといけない。テレビ局はいま、プラットフォームとしての人気も維持しながら、コンテンツメーカーとしていかに未来を戦っていくかの、選択を突き付けられているのです。
これまでは、自社で独自のプラットフォームを作って広告をつけたほうが収益が高いと踏んで挑戦するメディアがたくさんありました。しかし、やはりそれではうまくいかない。YouTubeやNetflixなどの強大なプラットフォームに負けて、お客さんが離れていってしまうのです。