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 ただ、スタジオにセットを建ててやるような大きな企画は、まだテレビの予算感でなければ成立しない。テレビには、テレビでしか作れない楽しさや面白さがあります。

 たとえば、百数十人の芸能人が一堂に会する『オールスター感謝祭』のような大規模番組は、いまのところYouTubeで成立させているモデルケースはありません。あのパブリックなお祭り感こそ、テレビならではの面白さ。コンテンツの住み分けを考えるのに、わかりやすい例ではないでしょうか。

純粋な「お笑いバラエティ」は今後増えるのか?

『とんねるずのみなさんのおかげでした』や『めちゃ×2イケてるッ!』のような、“ザ・お笑いバラエティ”な番組が消滅したり、ネタ番組やコント番組がなくなったり。2010年代は純粋なお笑いバラエティのパワーが失われていき、閉塞感がありました。

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 そういった番組が減ってきた理由のひとつに、少子高齢化の影響があります。テレビは視聴率至上主義なので、人口ピラミッドが逆ひょうたん型になっている以上、どうしても上の世代に向けて球を投げたほうが視聴率がとれる。

 本当は若い世代や自分たちと同世代の人たちに向かって球を放りたいのに、ただ笑える番組よりも、タメになる番組が求められる傾向にありました。

「コア層」向けに舵を切った日本テレビ

 ただし、その潮目も変わりつつあります。

 スポンサーは全体の数字よりも、消費の中心であるファミリー層や流行に敏感な若者層の視聴者を獲得することにもっと価値があると認識しはじめました。第2章でも書いたように、日本テレビは数年前から、全年代の視聴者よりも20代から40代のゾーンの視聴率を取っていこうと完全に方針転換しました。

©iStock.com

 なので、局内の視聴率の張り紙も、20代から40代ゾーン、いわゆる「コア層」の視聴率を張り出しています。

 最近でいえば、『有吉の壁』をゴールデンでレギュラー化したこともその一環でしょう。もしこの方針が成功すれば、これから少しずつ地上波のゴールデンタイムに若者向けの番組が増えていくかもしれません。

YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術

白武 ときお

扶桑社

2020年7月31日 発売