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官邸主導のキーマンを直撃すると……

 その2日後となる5月23日の朝、私は政権で官邸主導を取り仕切る和泉洋人首相補佐官を直撃した。その時のやり取りの中から、官邸に流れる空気が察せられる瞬間があった。

――会見での首相の疲れた様子からすると、本当は五輪のリスクにも悩んでいるのではないか?

「まあ、総理はもともと派手なパフォーマンスをしない人だから」

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――国民の強い反対がある中、中止のシナリオを見せることで国民の支持も取り戻せるのではないのか。

「支持率を考えればそうだけど、今は感染がこんな状況だから。(感染が)落ち着けば(世論は)ころっと変わると思いますよ」

――感染力が英国株の1.5倍のインド株のリスクもある。

「じゃあ、きょうはここまでね」

 世論は確かに変化する。だが、不都合なリスクにふたをする政権の希望通りになるとは限らない。読売の調査で内閣支持率が37%に急落した6月7日、菅首相は国会で「国民の命と健康を守るという前提条件が崩れればそうしたこと(五輪開催)は行わない」と中止シナリオへの言及を強いられた。

出典:「文藝春秋」7月号

 私は、「菅首相になぜ国民の声は届かないのか」(「文藝春秋」7月号、「文藝春秋 電子版」掲載)で、官邸主導の政治が曲がり角に差し掛かっている模様をレポートした。

 高齢者へのワクチン接種が完了しても、流行が収束までの道のりは続く。長い戦いでも国民の納得を得る「官邸主導」の見直しは、五輪より重い課題だ。

文藝春秋

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菅首相になぜ国民の声は届かないのか