「ドラゴンズファンというかもうマニアなんですよ」
そして、森との出会いもドラゴンズが繋いだ縁であった。
「ドラゴンズで一緒にやった清水(昭信)スカウトから “愛知県に良い投手いるよ”って電話がかかってきて、それが森だったんです。彼が高2の11月に、自分で(森の出身校の)豊川高校に電話して、アポ取って見に行って。そしたら身体はガリガリなのに地肩が強くて、キャッチボールでも強い球を投げていて、スライダーも良かったんですよ。“もし直球が10km速くなれば面白い存在になるな”と思って、帰りの電車に乗る前に“この投手取らせて下さい”って監督に電話してましたね。森が、僕が1からスカウトもした最初の選手でした」
日体大入学後に本格的に指導に当たったところ、森は「ビックリするくらいのドラゴンズファン」だったという。
「スカウト行って本人と話したら“ドラゴンズファンです!”とは言ってたんですけど、彼が入学して話してみたら、ファンというかもうマニアなんですよ、選手名鑑を読み込んでるタイプの。“この選手知ってる?”っていうくらいの選手の中学校とかも知ってて、ナゴヤ球場(2軍の本拠地)にも小さい頃から見に行っていたらしいです。大学時代、野球のことよりドラゴンズに関して話した時間の方が長いかもしれないですね」
辻は定期的に森と連絡をとっているものの、2軍での投球は「結果しか見れていない」という。そこで、6月9日ソフトバンク戦での投球を辻に見てもらった。
「凄い良いですね。直球が彼の良い時の球ですね、直球がアウトコースに行って、当たってもファールになってる。最近先発をやったり、長いイニングを投げるようになってますよね。浅尾コーチの発案だと思うんですけど、ありがたいです。森は三振を取るのが好きみたいで、力み過ぎてカットボールを特に投げたがるんですけど、遅いカーブやスライダーも良いんですよ。捕手(筆者注:この時の捕手は郡司)が上手く遅い球を使ってくれてますね。中々ファームだと映像は見られないんですけど、これを見て安心しました」
大学で野球の指導に当たっていることも手伝ってか、辻とドラゴンズの縁は続いている。今もタイミングが合えば沖縄キャンプへ挨拶に訪れるし、コロナ禍の今年は親交のある選手達とZoom飲みを行った。
「田島が誘ってくれたんですよ。結構向こうから連絡くれて、食事行ったりもしてますし。あの日も田島から“Zoom入れない?”って連絡もらって、入ったら中高で1個上の先輩の大野雄大さんもいて。いるなら最初に言ってくれよと思いましたよ」
最後に、辻はドラゴンズファン、そして森へメッセージを残してくれた。
「森の応援をよろしくお願いします、本当にそれしか無いですね。森は、ちっちゃい頃からファンだった球団に入れたわけで、その時に自分が見ていた様に、今は見られているわけなので。応援してもらっていることに感謝して、それを力にして結果を残して欲しいですね」
かつて恩師が立ち、自身が焦がれ続けたバンテリンドームのマウンドに、森博人が登る日はもうすぐそこまで来ている。
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