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タマスタで若鷹を追い続けて9年、ある制作スタッフのお仕事

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/06
note

選手との距離が近いからこそ捉えられる素の表情

 番組開始当初のスタッフは吉村さん、寺井さん、そして2017年に惜しまれつつ卒業した三原亜沙美さんがリポーターでした。

 3名とも元々野球好きではあったものの、取材経験はゼロ。

 一軍取材であれば周りに野球取材のルールを教えて下さる方や、経験のある番組スタッフがいることもありますが、当時のファーム本拠地、雁の巣球場には今のように取材陣も毎回いる訳ではなく、広報の方もいらっしゃらなかったそう。そんなことを言い訳にはしない方々ですが、大変な苦労があったろうと想像します。

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 インタビューのタイミングが分からずにとりあえず近くの広場でお昼ご飯を食べていたら、当時ホークスの外野手だった中原恵司選手が呼びに来て下さり、「ピクニックみたいですね♪」と言われた……というほのぼのエピソードも今では笑い話です。

 ちなみに、そんな雁の巣球場時代の貴重なショットがこちら。

甲斐拓也選手 ©川崎優

 選手たちが雁の巣球場の外野の草むしりをするのが恒例で、その撮影時に手伝いを命ぜられた「甲斐キャノン」でお馴染みの、当時支配下登録されたばかりの甲斐拓也選手から「これ、担いでもいいですか?」と声をかけられた時のオフショット。

 放送ではその甲斐選手の撮った映像がおまけ映像として使われました。多くは語らないが、いつも誠実にインタビューにも答えてくれていたという甲斐選手。厳しい育成時代を経て、ご本人のたゆまぬ努力で、今では日本を代表する選手へ……その姿を見ながら、その時のことを吉村さんや寺井さんも嬉しそうに振り返ります。

 選手との距離が近いからこそ捉えられるこういった素の表情は、今の番組ラストの『おまけ映像』にも繋がっており、もっとその選手を応援したくなる、私も一番楽しみにしているコーナーです。(出演者なのに、この時だけは視聴者目線・笑)

吉村さんが思うファームの魅力とは

 そんなこんなで9年間ずっとガッツリ野球中心の生活をしている吉村さんは、選手のことは、「一人の人として興味を持って取材している」と話しますが、どこか母親のように、見守るような大きなあたたかい視点が、心温まる表情の切り取り方や選手の描き方に繋がっているのでは……と私は思います。

 そんな吉村さんが思うファームの魅力とは?

「一人一人が違う才能や魅力を持っている。そこが応援したくなるところ。そして結果が出た時の喜びやうまくいかない辛さ、悩みなどを日々表現しながら生きている感じでそこが人間らしくていい」

 苦しい時間の方が多いファームでもがきながらも、積み重ねた努力がある日突然報われる日が来る。そこにいつも驚き、「必ず成長していける、変われるのだと成長著しい若鷹に日々教えられるし、それを見届けることが自分への励みになる」とも話してくれました。

 若鷹の母であり研究者である吉村さんをはじめとしたこの番組スタッフ陣。ファンの方と選手の間に立っている、という責任のもと……文字通り切磋琢磨する若鷹たちを応援しながら、一人でも多くの選手の姿や想いをお届けできるように。そして一軍の舞台で活躍する姿を見届けられることを願って……これからも一同精進していく所存です!

リポーター陣。左・川崎、右・上杉あずささん。タマスタ筑後のキャラクター、ひな丸のボードの前で。 ©川崎優

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