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G.G.佐藤さんと悩んだ日々…トレードは人生をどう変えるか〜米野智人の場合

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/08
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プロ野球人生で最も練習した1年

 移籍2年目の2011年もほとんど2軍生活で、もしかしたら今シーズンで現役生活が終わるかもしれない……という不安が頭をよぎっていた。

 シーズン終盤は、野球選手にとって電話の呼び出し音に敏感になる時期だ。覚悟はしていたが、結局、その通達は来なかった。

 その年の秋季キャンプで、首脳陣から思いもしない言葉をかけられた。

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コーチ「外野で勝負してみないか!?」
米野「は、はい! やってみます!!」

 まさかライオンズに来て、首脳陣からその言葉をかけられるとは思わなかった。

 ヤクルトの時に「外野にポジションを変えたい」と言った1ヶ月後にトレードとなり、「自分は捕手としてチームに貢献できるようになるしかないんだ」と耐えてきたが、ここにきてコンバートだ。

 この年で退団することになったG.G.さんもいなくなり、右打者の外野が少し手薄になったこともあり、外野で勝負した方がチャンスはあるという。

 やるしかない――。

 当たって砕けろの精神で、秋季キャンプからノックを浴びるように打ってもらった。バットスイングの量も捕手時代より増やし、翌2012年春季キャンプでもノックの嵐、毎日居残り特打。30歳からの、捕手一筋からの外野コンバートだった。

 若手よりも練習した。過去で一番練習した。

 プロ野球はそんなに甘い世界じゃない。短期間の練習だけでは結果が出ないことなど知っていたが、やるしかない。

 その甲斐あってか、2012年に外野手として気持ち新たにスタートした僕は開幕1軍をつかみ取り、同年4月26日あの逆転満塁ホームランを放ち、やっとライオンズの一員になれた。

 そのインパクトは強く、おかげで2015年までライオンズでプレーすることができた。

 最後は戦力外通告を受けたが、覚悟はしていたし、予想通りだったので本当に落ち着いていた。

 ライオンズに5年半、いろいろな経験をさせていただいた。感謝――。

西武時代の筆者・米野智人

最初と最後が「ファイターズ」

 しかし、自分の中でやり残していることがあった。捕手に再挑戦したいという思いだ。

 高校卒業後に捕手としてこの世界に入ってきた。最後にもう一度だけ挑戦したい!

 ここで諦めたら後悔する、そう思って現役続行を希望した。

 練習を続け、他球団からのオファーを待った。

 すると、懐かしい方から着信があった。電話越しの声は、木田優夫さんだ。

 当時、北海道日本ハムファイターズのGM補佐を務めていた木田さん。ヤクルト時代によくバッテリーを組ませていただいていた方からの連絡だった。

木田「米野、久しぶり。元気?」
米野「はい。なんとか元気です」
木田「この後は、どう考えてる?」
米野「現役続行を希望してます」
木田「わかった。また連絡します」
米野「はい。お願いします」

 早っ。

 本当にまた連絡来るのか、心配になった。

 それから1週間後、本当に連絡が来た!

 正式に契約してくれるという内容だった。が、予想外の契約内容で、選手兼2軍バッテリーコーチ補佐というオファーだった。

 コーチ補佐!? 正直、その話を聞いた時は戸惑った。

 とてもありがたい話ではあるが、もちろん経験したことはないし、球団としても前例のない契約内容だった。

 でも、選手としても挑戦できるので、もちろん「よろしくお願いします」と回答。北海道日本ハムファイターズに入団することが決まった。

 結局、ファイターズには1年間しかいなかったが、選手とコーチの両方からプロ野球を経験することができた。後悔はない……と言ったら嘘になるが、自分の野球人生に未練はなく、納得するかたちで引退することができて本当に良かった。

 日本一にもなれたし、大谷翔平ともチームメイトになれたし(笑)。

 前年に戦力外になり、手を差し伸べてくれたファイターズに、僕は自ら引退を申し出た……。

 自分で考えた末に下した決断だが、本当に申し訳ない気持ちになった。それでも球団は僕を尊重してくれた。

 本当にお世話になりました。

 小学生の頃、初めて入団した地元札幌の少年野球チームはファイターズだった。

 現役最後のチームもファイターズ。

 これからもファイターとして戦い続けます!

 結果的に僕の現役最終戦は2016年4月20日、札幌ドームでの対埼玉西武ライオンズ戦だった。ここでも古巣が関わっている!

 今になって思うのは、3球団を経験したことは引退後の人生に確実に活きている。スワローズ、ライオンズ、ファイターズ。お世話になりました。

 本当にいろんなことを経験させくれた野球に、心から感謝しています。

◆ ◆ ◆

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