1ページ目から読む
2/4ページ目

「引き取り屋」の実態

 引き取り屋とはどんなビジネスなのか――。2012年の動物愛護法改正の取材を終え、13年9月にその改正法が施行されて以降、ペット業界への法改正の影響について掘り下げていた私は、そんな焦燥にかられた。引き取り屋ビジネスの実態を解明するため、14年1月、15年3月、16年8月の3回にわたり、私はある引き取り屋を訪ねた。

 栃木県矢板市内の最寄りのインターチェンジから車で数分も走ると、コンテナやプレハブが雑然と並んだ一角が現れる。入り口で声をかけると、初老の男性が姿を見せた。後に動物愛護法違反(虐待)と狂犬病予防法違反(未登録・予防注射の未接種)の容疑で栃木県警に書類送検されることになる、白取一義氏だ(動物愛護法違反については不起訴処分)。

栃木県矢板市で営業する犬猫の「引き取り屋」。引き取られた犬猫の多くが、この環境で一生を終える。 写真=動物愛護団体提供

 2度目に訪ねたとき、白取氏は時間をかけて、引き取り屋ビジネスについて語ってくれた。

ADVERTISEMENT

「僕が引き取りやってるのをペットショップや繁殖業者が知っていてね。依頼を受けて犬や猫を引き取っている。お金をもらって」

 建物からはひっきりなしに犬の鳴き声が聞こえてくる。白取氏に案内されてプレハブの中に足を踏み入れると、犬たちの吠え声につつまれた。会話もままならない。放置されたままの糞尿のにおいで、息をするのが苦しい。犬たちは小さなケージに入れられ、足元は金網。ケージには犬の毛がびっしりとからみついていて、多くが三段重ねにされている。なかには2匹一緒に入れられ、ほとんど身動きできない状態の犬たちもいた。

 圧倒的に犬が多いが、猫たちの部屋もあった。猫もケージに入れられたまま。爪が伸びっぱなしで何重にも巻いてしまっている猫や、皮膚病でかきむしったのか流血している猫がいて、ほとんどがじっとうずくまっていた。