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「僕みたいな商売必要でしょう」ケージに糞尿が堆積、緑内障で眼球が突出…売れ残った犬猫を回収する“引き取り屋”の言い分

『「奴隷」になった犬、そして猫』より #1

2021/06/22
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「僕みたいな商売……、必要でしょう」

 白取氏は栃木、群馬、茨城、千葉など関東各地のペットショップ、繁殖業者から依頼の電話を受けて出向き、犬や猫を引き取っていた。埼玉県内の競り市(ペットオークション)に行き、「欠点」があって売れ残った犬や猫を引き取ることもあるという。

「週に1、2回は必ず電話があって、どこかに出向いている。1回あたり5~10頭、多いときは30頭くらいを引き取る。昨日は繁殖業者から7頭引き取った。その繁殖業者は『皮膚病になっていて、それはもう治ったんだけど、治るまでの間に生後何カ月にもなっちゃった。市場(競り市)では売れないから持って行ってくれ』って言っていた」

 こうして敷地内に、常に150匹以上の犬を抱えていると説明する。白取氏も含めて3 人で犬の面倒を見ており、「毎日、掃除して、すべての犬を運動させている。売れそうな犬がいれば、繁殖業者や一般の人に5000~2万円くらいで販売する。無料であげるのもいる。死んじゃう犬は年間30、40頭くらい。みんな寿命」と主張し、栃木県動物愛護指導センターにも同様の報告をしていると話す。

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過酷な環境で飼養される小型犬(2015年12月撮影) 写真=動物愛護団体提供

 白取氏の手元には小型犬だと1万円、中型犬だと2万円、大型犬だと3万円が引き取り料として入ってくる。猫は5000~1万円程度を取る。次の買い手が見つかりにくい6、7歳以上だとその倍の料金を取ることもある。白取氏はこう話す。

「ショップからもよく電話がかかってくるよ。ショップの場合はだいたい5、6カ月以上の子犬を引き取ってほしいと言われる。ペットショップの店頭には20万、30万で売れる新しい犬を置いたほうがいいと、賢い社長はわかってるんだよね。でもバカな社長は、大きくなってしまっても、1万、2万でもいいから売ろうとする。僕はそういうバカな社長には『新しい犬をどんどん入れろ。5、6カ月の犬は俺のところに持ってこい』って言ってる。殺さないで、死ぬまで飼う。僕みたいな商売、ペットショップや繁殖業者にとって必要でしょう」

鼻をつくような糞尿のにおいが充満

 驚くべきことに、栃木県動物愛護指導センターは、白取氏のビジネスを容認してきた。たとえば2014年6月、同センターは事前に連絡したうえで立ち入り検査をしている。だが、「特に問題はないと認識している」と実際に検査に入った県の担当者は取材に答えている。

 一方で動物愛護団体の依頼で現地を確認した獣医師は、適正飼養から大きく逸脱した状況だったと指摘する。

「換気できる窓が見あたらず、全体に薄暗くて十分な採光が確保されていない。いずれの建物も、鼻をつくような糞尿のにおいが充満しており、犬たちが暮らすケージに清掃の形跡は見られなかった。脚に糞を付着させている犬も多くいて、長毛種では犬種が判断しがたいほど全身が毛玉に覆われ、四肢の動きが制限されている犬も確認した。皮膚炎や眼病などの可能性がある犬がいたが、適切なケアが行われている様子はなかった」

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