あるボウリング場が『STOP! 教え魔』という張り紙をしたことで、にわかに話題となった「教え魔」という存在。常連客が勝手にコーチングをすることで、初心者は困惑し、やがてボウリング場に来ること自体を避けてしまうという事態が多発、「お客様同士のコーチは是非ご遠慮ください」と注意を呼びかけている。
ほとんどの人は「あぁ、そういう迷惑なオジサン、よくいるよね」で、流してしまうところだが、調べてみると「教え魔」はボウリング場だけでなくゴルフ練習場やテニスサークルなど様々な場所に出没しており、かなり根深い問題となっているようだ。(取材・執筆=素鞠清志郎/清談社)
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初心者へのコーチングで、仲間内で「上下関係」が
初心者が練習に打ち込んでいると、いつの間にか後ろにポジショニング。タイミングを見計らいつつ、同じ趣味を持つ仲間という雰囲気で声をかけ、自己流のアドバイスを始める……。
このような行為は、見方によっては「気さくで、教え好きな親切な人」でもあるのだが、なぜ最近になって「教え魔」として問題視されるようになったのか。
プロコーチの資格を持ち、都内のボウリング場で働く赤塚一紀さん(仮名)に話を伺った。
「上級者が初心者に対してアドバイスすることは自然なことで、何も悪いことではないと思います。ただし、アドバイスしていいのは初心者から『教えて欲しい』とお願いされた場合に限るんです」
教え魔の「魔」たる所以は、自分から「教えてあげようか」と近づき、知識や経験でマウンティングしてくるからなのだ。
「ボウリング場で多いのは、見ず知らずの人にいきなり声をかけるタイプではなく、同じサークル内で初心者にコーチをする人ですね。ボウリングはアベレージで実力を図れるので、仲間同士でも上下関係が出来てしまう。要するに、そのグループ内で上手いとされている方が、初心者に対してマウントを取るわけです」
各地のボウリング場では、地元に根付いたシニアのサークルが多く活動しており、こうした常連客が大事な収入源となっている。
「ボウリングのシニアサークルは、7割が女性で男性が3割くらいの構成が多いんですよ。その男性の中でちょっと上手い人が教え魔になって、女性に対して我が物顔で指導しているのをよく見ますね」
そんな「サークル内教え魔」が、トラブルを起こすこともあるという。