1ページ目から読む
4/4ページ目

体育会系だけじゃない 将棋道場にも出没する「教え魔」

 やんわり断っても無視。初心者でもグイグイくる教え魔への対処は難しい。こうした「コーチしてあげる」という風潮は、スポーツなどの体育会系ならではのものかと思ったが、実際には文化系の世界にも出没する。

「初心者、特に女性が道場に来なくなってしまうので『教え魔』は本当に迷惑です」と語るのは、将棋関係者の中野海さん(仮名)だ。

「将棋道場や、アマ大会など、不特定多数の人が集まって一斉に対局するような場所に『教え魔』が出没するんです。将棋は投了したあとにその対局を振り返る『感想戦』をする習慣があります。ここに見ていた見ず知らずの人が『あの手が良くなかったね』などと口を挟んでくるんです。

ADVERTISEMENT

 基本的に感想戦は対局者同士で行うもの。そこに割り込んでくるだけでもマナー違反ですが、さらに『あんな手を指すようじゃ分かってない』などとダメ出しするのは最悪です」

 将棋道場で教え魔のターゲットにされるのは、圧倒的に女性だという。

「ただでさえ女性が少ない世界ですが、そこに教え魔が集中する。女性の側からしてみたら、次から次へと知らない男性(特に年配者)が口を挟んでくるという状況で、これならスマホのアプリで指していたほうがよっぽどいいと思って道場に来なくなってしまうんです」

©️iStock.com

 「教え魔」のほうが年上のため「年上の言うことは聞くもの」と考える人もいるのがやっかいだ。

「『頼んでもいない人に、分からないことを教えられて迷惑だった』と言っても『親切で教えているのだから』
と、迷惑がるほうが悪いようなことを言われてしまうこともあり、根は深いです」

 若者が最も嫌う話題は、年配者の自慢話や過去の武勇伝だという。「教え魔」がしていることは、これに近い。さすがにこうした一方的な会話は職場や家庭ではハラスメントになるという意識は芽生えてきているようだが、趣味の世界ならいいだろう、と思わず知識をひけらかしてしまうのが、まさに「魔が差す」瞬間なのだ。