『太陽戦隊サンバルカン』では、息子のためにゲスト出演
その亜星さんの実の息子さん、小林朝夫さんも俳優となり(現在は引退)、東映スーパー戦隊シリーズ第5弾の『太陽戦隊サンバルカン』(’81年)で、黄色い豹の戦士・バルパンサーとなって戦う豹朝夫役を演じた。そんな息子のためにと亜星さんもなんと、父親役で第38話にゲスト出演。サブタイトルもズバリ「豹朝夫のおやじ殿」だった。
サンバルカンの秘密は親にも内緒、てっきり東京に出て真面目に働いていると思った息子がプータローまがいの生活を送っていると知った、亜星さん演じるバルパンサーのおやじ殿は怒り心頭。実家に連れ戻そうとする。だが、息子の真剣なまなざしを信じたおやじ殿は、黙って訳も聞かずにひとり実家へ帰……ろうとしたところを、敵組織・ブラックマグマに捕らえられ……という展開。結局最後は、バルパンサーはじめサンバルカンに助けられ、秘密はバレてしまうものの、再び父子の絆を取り戻すという同作屈指のハートフルなエピソードとなった。
亜星さんの中に息づく、“古き良き日本の父親の魂”
後年、本話脚本を執筆した上原正三さんにこのお話について伺ったところ、当然のことながら亜星さんが父親役を演じることはあらかじめ決まっていたとのこと。
「僕の父と亜星さんは、外見もイメージも全然違うんだけど、“最後まで息子を信じる父親像”はいっしょ。僕の父も、作家になりたいという僕の夢と想いを信じてくれて、30近くになってもパチンコ暮らしを続けていた僕を、文句も言わずに養ってくれた。“自分のやりたいことをやりなさい”というのが父の口ぐせだったね。亜星さんは、そんな僕の父の想いを見事に演じてくれたし、亜星さんの中に父の面影を見出すことができた。あのお話は僕にとっても忘れられない1本ですよ」と上原さんは語った。
向田さん、上原さんもその演技に、それぞれの父親の面影を見出したという小林亜星さん。亜星さんの中には脈々と受け継がれてきた“古き良き日本の父親の魂”が息づいているのだろう。亜星さんは朝夫さんやバルパンサー、そして西城秀樹さんや梶芽衣子さんだけの父親でなく、日本人全員の父だったのだ。そう考えると子供の頃、さんざん聞いていた『サリー』などのアニソンの数々は、亜星さんが我々子供たちに聞かせていた“日本の子守唄”だったといえよう。
亜星さん、素敵な歌の数々、そして、いつの時代も変わらぬ、温かくって厳しい“日本の父親”像をありがとうございました。ゆっくりじっくり天国で骨休めしてください。