最近、日本ではIOCのトーマス・バッハ会長の評判がすこぶる悪いです。

 まず東京で緊急事態宣言が発令中であった3月、同氏が東京オリンピック・パラリンピックについて「安全で確実」に開かれると発言したことが問題になりました。

 その後4月末に行われた5者協議の挨拶では、「歴史を通して、日本国民は不屈の精神を示してきました。逆境を乗り越えてきた能力が日本国民にあるからこそ、この難しい状況での五輪は可能になります」と無根拠な発言をさらに繰り返したことから同氏の評判はガタ落ち。どこか「日本人は褒めておけばいいや」と言いたげな、上から目線な物言いに筆者は嫌なものを感じました。

ADVERTISEMENT

IOCのトーマス・バッハ会長 ©AFLO

母国ドイツでの評判は?

 ところでバッハ会長、彼の母国ドイツでの評判はどうなのでしょうか? バッハ会長はもともとフェンシングの選手。1976年のモントリオールオリンピックでは金メダル(フルーレ団体)を獲得しています。

 ただ近年の彼はスポーツマンとしてよりも、「やり手のビジネスマン」として有名です。引退後、弁護士となった彼は1991年にIOC委員に就任。現在は9代目会長として年間約3000万円の報酬を受け取るだけでなく、IOCが設立した財団の理事長や、子会社の社長も兼務し、それらの報酬は非公開とされています。

 バッハ会長の「お金がらみ」の問題でドイツで最も話題となったのが、かつて彼が産業機械大手のシーメンスと結んだ顧問契約でした。彼は2000年からシーメンスの相談役を務めていましたが、同社から年間40万ユーロ(約5300万円)の顧問契約料のほかに「日当」として1日に5000ユーロ(約66万円)を得ていたことが明るみになったのです。

 当時のシーメンスの監査役会は、年間契約料が高額である場合、日当が追加で支払われる状況は「まったく一般的ではない」として高額報酬を問題視し、2010年に彼との契約を打ち切りました。こうした問題があったことから、ドイツでバッハ会長といえば、「桁違いの報酬の人」というイメージで、よく言えば「やり手のビジネスマン」、悪く言えば「お金に汚い」と思われています。