ゆっくりと距離を保ちつつ同じ方向に移動する。車は駐車場内を移動し、道の駅の建物の正面に停まった。絶対に降りてくると確信したその瞬間、スライドドアが開いた。
降りてきたのは学校の制服を着た少女。身長からして高校生ぐらいに思えた。
「えっ!」
私とディレクターから同時に声が漏れる。事前の情報では子どもは未就学児だったはず。目の前にいる女性はどう見ても10代半ばを超えている。違った……。
その後、駐車場に停まっていた他の車も見てみたが、幼子を連れた家族は乗っていなかった。4人家族を追いかけていた私たちにとって、この日の取材は非常に残念な結果に終わってしまった。
見覚えのある白い車
翌朝も同じ時間にホテルを出発し道の駅に向かう。
今日こそ4人家族に出会いたいと願いつつ道の駅に到着したが、駐車場の車の台数は昨日より少なかった。また“空振り”か。半ば諦めつつ車を降りると、見覚えのある白い車が停まっているのが見えた。
「あれ? 昨日の車と似てるよね?」
私が気づいたのと同じタイミングで、ディレクターは前日メモ帳に書き記した車のナンバーを確認していた。4桁の数字、すべてが一致した。
「もしかして、あの女性たちは車上で生活しているのか─?」
前日とほぼ同じ時刻に目張りが外され、白い車が移動を始めた。停車した車から降りてきたのは昨日と同じ40代ぐらい、そして高校生ぐらいの女性二人組。
この状況をどう受け止めればいいのか。一瞬迷ったが、とにかく確認しなければならない。ディレクターは二人を追いかけ、私は彼女たちの乗っていた車に向かった。女性たちが乗っていた車の窓ガラスの内側には水滴がびっしりとついていた。エンジンを切った冬の車内で数時間を過ごさなければ、こんな水滴のつき方はしないだろう。
およそ30分後、白い車に戻っていく二人を見た。少女が少し先を歩きつつ、時折会話をしながら歩く二人。一見すると普通の母と娘にしか見えない。本当に車上で生活しているのか? 私たちは声をかけることすらできず、ただ眺めるしかなかった。
もはや当初取材をするつもりだった4人家族よりも、この二人の女性のほうが気になった。