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「真摯な恋愛も…」性的同意年齢の13歳からの引き上げに反対するオトナのおかしな論理

法務省「性犯罪に関する刑事法検討会」の委員が明かす

2021/06/23
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「同意年齢」ではなく「性的保護年齢」

 刑法でも、処罰対象から除く工夫をすればよい。これに対しては、「刑事手続きに乗せること自体が不適切」という意見もある。しかし、その背景にネグレクトや非行があることからすれば、むしろ警察や児相がその事実を把握し、家庭環境を調整すべく積極的に介入すべきではないか。それに、刑法にも、犯罪となり得るが処罰対象から外す規定は、犯人蔵匿罪と証拠隠滅罪に親族の場合の特例(105条)、親族間の窃盗に関する親族相盗例(244条)があるのだ。

 以上からすれば、そもそも「同意年齢」というネーミング自体が適切ではないと言えるから、「性的保護年齢」と言い換えることを提案する。そうすれば、「13歳でも真に同意能力がある子はいる」等という空疎な議論は不要となるし、「同意があったと勘違いした」等という加害者の弁解も排除できる。

 私が、「性的保護年齢」を16歳とすべきと考える理由は、せめて義務教育の子どもたちは、無条件に大人からの性的搾取から守られるべきと考えるからだ。

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犯罪になるかどうかの線引き

 さらに、強制性交等罪と強制わいせつ罪とで、年齢に差をつけるべきではない、と考えている。強制性交等罪と強制わいせつ罪の区別は曖昧なケースも多い。子どもに対して性交までは難しくても、わいせつ行為なら出来るという大人はたくさんいる。A子さんの事例は、かなり悪質な性加害であるが、行為態様は強制性交等罪ではない。全裸にして性的部位を舐めたり陰部に指を入れたりしても、現行法では強制わいせつ罪にしかならない。若年者の保護という観点からすれば、両罪の年齢に差を設けるべきではない。15歳同士のカップルのキスは、免責により犯罪となることを避けられるはずだ。

 犯罪になるかどうかの線引きはとても重要だ。その線引きが曖昧だと、いつ自分の日常的行為が犯罪になるか分からず、行動の自由自体を奪うことになりかねないからだ。裁判官によって、有罪と無罪が分かれるようなことはあってはならない。だから、刑法の条文は、分かりやすい文言でなければならない。

 とすれば、年齢ほど明確な基準はない。解釈の余地がないのだから。

刑法も子どもを守る視点で改正すべき

 先日、過去のわいせつ行為を理由に教員の免許再交付を拒めるようにする児童生徒性暴力防止法が、国会で成立した。「教師と生徒の真摯な恋愛はあり得る」「教師と生徒の結婚は少なくない」「生徒から新任教師への働きかけも多い」という反対論を乗り越え、生徒を全面的に保護することに舵を切ったのだ。

 刑法も、子どもを守る視点で改正する必要がある。子どもは無条件に守られるべきだ。この国は、子どもをどう守っていくのか。子どもに「性行為の自由」を保障し、大人と同様の責任を負わせるのが国として正しい姿とは到底思えない。

「真摯な恋愛も…」性的同意年齢の13歳からの引き上げに反対するオトナのおかしな論理

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