自殺や他殺、発覚が遅れた孤独死の現場となった不動産を、一般的には「事故物件」と呼ぶ。新しい住まいを探している方のほとんどが避けるだろう。
一般的に事故物件は買い手を選ぶため、周辺価格相場より数割引で取引されることが多い。事故物件を手放したくても、引き取り手が見つかる保証がないため、不動産会社にたらい回しにされることもあるという。
そんな事故物件を専門に扱っている会社がある。株式会社MARKSは、2019年4月から自社で運営するサイト「成仏不動産」で、事故物件の仲介や買い取り、再販売をしているのだ。物件を再生させる際の工夫と苦労を、株式会社MARKS社長の花原浩二氏に聞いた。(全2回の1回目。後編を読む)
事故物件を扱ううえで大切な業務、まずはご供養・お祓い
――まず成仏不動産を利用される方が、どういったきっかけで相談にくるのか教えください。
花原 事故物件の性質上、相続で取得して処分に困った方が最も多く相談にいらっしゃいます。ありがたいことにさまざまなメディアで取り上げていただいてることもあり、それを見て当社の存在を知った方が、サイトの問い合わせフォームにご相談くださるケースが多いです。他には司法書士や税理士、不動産業者、葬儀会社から紹介いただくケースもありますね。
問い合わせをいただいたら、当社で現地を確認したうえで価格査定に。その後、ご遺族間で相続財産の配分などが決まりましたら、当社が介入して買い取りもしくは仲介をさせていただくといったフローです。
――事故物件を扱う貴社ならではの業務はありますか。
花原 当社が購入する物件は全て、お寺にご供養、神社にお祓いを依頼します。他にも社員向けに2か月に1回お祓いを依頼しているのですが、それは何も幽霊が出たからというわけではないんです。目的は、社員の精神的な負担をできるだけ軽減し、気持ちよく働いてもらうため。私自身、心霊体験は1度もありません。霊感が強い方は見えることもあると聞きますが、少なくとも私は怖い思いをしたことはないんです。
それから、買い取った物件に施す特殊清掃を業者に外注するんですが、指揮役として当社の社員も現場に入ります。物件によってどこからどこまで特殊清掃を入れるかが異なるため、ここまでは特殊清掃の範囲で、残りは一般的なリフォームといった指示を社員が的確にしていくことで、適切で無駄のない物件再生ができるんです。
その際に、ゴーグルやマスク完備の防護服を着ます。亡くなられた方の死因がハッキリとわからないケースもあるため、特殊な感染症が死因だった場合のリスクに備えて、肌が外気に触れないような処置を施しています。人づてに聞いた話によると、因果関係は不明ですが、事故物件の現場に入ったあとに病気で亡くなった方もいるそうです。あとは、現場に残る強い腐乱臭は至るところに付着しますから、その対処の意味もあります。