――実際に購入されるのは、どういった顧客が多いか教えてください。
花原 最も多いのは、収益用不動産として購入する投資家です。自らの住まいとして買う方は、独身やシングルマザーの方が多い傾向にあります。事故物件であることを苦痛に感じながらも我慢して住んでいるのでは、と一般的に思われがちですが、そういった方はほとんどいない印象です。築年数が増えたり、駅からの距離が離れたりすると不動産価格は安くなりますが、そうした条件の一つとして事故物件であることを捉えている方が多いので、ある意味“賢い買い方”をしていると言えます。
なかには、お客様が自ら物件のリフォームをすると言って、ほぼ仕入れ時のままの状態で引き渡したケースも。やはり、あくまでも心理的な問題で物件に実害は何もありませんから、気にしない人にとっては単なるお買い得物件なんです。弊社はそうしたお客様と多くお付き合いをしています。意外に思われるかもしれませんが、資金に余裕のあるお客様が多く、融資限度額ギリギリまでローンを組まれている方は少ないんですよ。今のところ海外のお客様はあまりおりませんが、当社の取り組みが浸透していけば、海外投資家が目を付けていくかもしれませんね。
大手ハウスメーカーを退職し「成仏不動産」を開設するまで
――そもそも、花原社長がこのような事業を始めようとしたきっかけは何でしょうか。
花原 阪神淡路大震災が発生した当時、大学生だった私の周りには、身近な人を亡くした方がたくさんいらっしゃいました。縦揺れの直下型地震だったので、多くの建物が倒壊して……。その経験が、地震に負けない家づくりをしたいという考えに発展して、新卒でハウスメーカーの大和ハウス工業株式会社に入社したんです。
大和ハウスでは小学校の跡地や山を仕入れて、何百区画の建売住宅が並ぶセキュリティタウンやエコタウンを築く部署の責任者などをしていました。そのときに目の当たりにしたのが、昔建てた建売住宅が空き家に変わるさまや、地元で空き家問題が加速するさまでした。
新築を建てる仕事にも意義はありますが、それだけじゃなくて不動産にもいろいろな見方が必要だと思ったんです。そして、不動産の可能性を追求しながら世の中の困りごとを解決したいと考え、独立して作ったのが株式会社MARKSでした。
ですから、初めから事故物件に携わりたかったわけではなく、大和ハウス時代に得た知識と経験と人脈を使い、従来の目線を変えていくことで不動産にまつわる困りごとを解決していきたかったのです。