1ページ目から読む
3/3ページ目

 彼は帰国後、こんなメールをくれた。

「Arrive. Yes safe. Everything ok.(到着したよ。安全で、問題なしさ)」

 その返事に少しホッとしながら、コロナ対策のため隔離施設にいるという彼に、さらに質問を送ってみた。

ADVERTISEMENT

〈ピエリアンアウンの抗議についてどう思いましたか? 彼が日本に残ったことをどう感じますか?〉

ミャンマー代表キャプテンのマウンマウンルイン選手(中央、赤いユニフォーム。6月11日に行われたミャンマー対キルギス戦で撮影)

 それから1週間が過ぎたが、未だに返事はない。選手たちは帰国後、ミャンマーサッカー協会から個別に呼ばれ、聞き取りをされたという。隔離期間終了後、そのまま自宅へ帰ることができるのか。不安を感じ、萎縮しながら過ごしているのかもしれない。

日本の難民認定率は0.4%

 ピエリアンアウンは22日に難民申請をした。出入国在留管理庁難民認定室の担当者に電話で取材すると、「速やかに認定できるよう全力を尽くします」と答えた。1ヶ月ほどで認定される見込みだ。

 難民申請とほぼ同じタイミングで、彼の故郷マンダレーでは激しい戦闘が起きた。民主派が創設した国民防衛隊の施設が国軍に狙われたのだ。民主派の8人が殺され、他に8人が拘束されたという。現地は依然、予断を許さない状況だ。

 一方、今回のケースを例に、あえて日本で政治的なアピールをし、そのまま難民申請をしようと考えるスポーツ選手が増えるのではないかと危惧する声もある。近いところでは、東京五輪の難民選手団29人(内訳はシリアが9人、イラン5人、南スーダン4人など)が、来月14日に来日する予定だ。

 また、在留資格を6ヶ月延長するなどの、ミャンマー人への緊急避難措置が発表されてから1ヶ月、その実効性を疑わせる実例もある。

ミャンマー対キルギス戦、試合直前の様子

 難民申請4回目のある在日ミャンマー人(49)は、所定の「理由書」を用意して品川の入管施設を6月10日に訪ねたが、その結果、すでに在留認定を受けている人の延長は認められるが、そうでない人の場合、講じられる措置はないとの回答だった。難民認定手続きのスピードも、緊急避難措置の前後で変わっていない。これでは、メディアに取り上げられるスポーツ選手だけ優遇するのか、との非難が生じかねない状況だ。

 日本の難民認定率は0.4%と国際的に見てもかなり低い水準である。とはいえ、税金を使った政策であるだけに、この先どのような進路を取るのか国民的な議論が必要だろう。

撮影=尾崎孝史