暴力団組織から脱退するにあたり、指詰めを強要されることは日常的に行われてきた。大きなトラブルを起こして親分の逆鱗に触れて指を切断するケースや、ささいなミスでも指詰めを強要されることもあった。
その一方で、「指を詰めても何も得ることはない。自分は若い衆に指を落とさせない」と公言する幹部もいる。
指を噛み切った子分
長期間にわたり暴力団犯罪捜査に携わってきた警察当局の捜査幹部OBが、「かなり昔の話だが」と前置きしたうえで、凄惨な指詰めのエピソードを振り返る。
「東京のある組で、カネをめぐって大問題が発覚してしまった。トラブルは若い衆が下手を打ったことが原因だった。そこで、この組の親分が若い衆を呼び出して『どうなっているのだ』と詰問した。
トラブルとは、この若い衆が殺されてもおかしくないほどの大きなものだったようだ。そこで親分が『責任を取れ。すぐにけじめをつけろ』と迫ったところ、若い衆はその場で自分の左手の小指の先端に噛みついて、歯で食いちぎってしまったという。これには親分も参ったらしい」
こうした大きなトラブルだけでなく、日常のささいな不始末から指詰めを強要されることもあった。
山口組系の会長(42)が、上部組織の事務所の掃除や電話番など、いわゆる「事務所当番」を組員の男性に言いつけていたにもかかわらず、男性がサボったことに激怒。男性にノミとハンマーを手渡して自ら左手小指を切断させたとして2008年5月、強要容疑で兵庫県警に逮捕された。指詰めを強要した理由は「サボり」だった。
ほかにも車の迎えが遅れたということで同様の制裁もあった。山口組系組長(53)が組員だった男性に大阪府内のスナックに車で迎えに来るよう命じていたが、到着が遅れたことに立腹。事務所で「けじめとして指を落として辞めろ」と脅して左手小指を切断させたとして2013年2月、強要容疑で逮捕されたケースもあった。