組長と子分の間で交わす「親子盃」、背中に入れる和彫りの「刺青」など、暴力団社会には特有の多くのしきたりや習慣、掟がある。そうした中で、不祥事や不始末があった際のケジメとして行われるのが「指詰め」だ。

 自ら手の指を切断し、謝罪の意や誠意を示すために行われるとされ、組織を脱退する際にも行われている。一般社会では受け入れがたい特異な習慣だが、暴力団幹部らは「ヤクザの社会での伝統的なケジメ」と口を揃える。

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心臓の鼓動に合わせて痛みが…

「指を詰めた時は、その日の夕方あたりから、心臓の鼓動に合わせて切断した指の先に『ズキン、ズキン』と痛みが走った。3日間ほどは本当に痛かった」

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 左手の小指の先端を切断した経験がある、首都圏に活動拠点を置く指定暴力団の古参幹部が自らの体験を語った。

「自分が指を詰めたのは10代の後半のまだ若いころだった。関東地方のとあるテキヤの組織に志願して入門した。事務所に出入りするようになったが、事情があって離れることになった。わずか数カ月のことだったので、申し訳ないという気持ちから指を詰めることにした」

 重大な不祥事を起こした訳ではなかったが、自身で「指詰め」することを決めたという。

「指を詰めるにあたって、自分で包丁を右手で持って左手の小指に当てて、親しい友人に包丁の上部にハンマーを振り下ろしてもらった。一発でスパッと切れた。痛みはあったが、すぐに病院で治療してもらった。麻酔が効いてくると痛みはさほどではなかった」

ある暴力団幹部は親しい友人に包丁の上部にハンマーを振り下ろしてもらったという(写真はイメージ) ©iStock.com

 病院ではまず切断した指の先端の骨を削ったうえで、縫い合わせた。当初は麻酔が効いていたが、切れてくると痛みが続いたという。テキヤを志願しておきながら短期間で抜け出したことは、指を詰めて詫びを入れるほどの不祥事かどうかは不明だが、「部屋住み」と呼ばれる、住み込みでの行儀見習いが身に付く前に辞めたため、テキヤの事務所を訪ね、切断した指を親分に手渡して詫びたという。

 この古参幹部が当時の心境を振り返る。

「テキヤの親分に対して気持ちを伝える目的もあったが、やはりヤクザをやって行くには指を詰めていた方が格好良いという考えや、指を詰めていることへの憧れという気持ちもあった。まだ10代の後半の本当に若いころのことだったので勢いで詰めた。今からすると、若気の至りかもしれないが」

 古参幹部は、その後、改めてテキヤとは違う指定暴力団の2次団体の組長の盃を受けて組織に入り、首都圏各地で長年にわたり活動を続けている。