指詰めで多数の逮捕者が出ている
指詰めは暴力団の間では伝統的に行われてきたことだが、刑事事件として立件の対象となって久しい。近年、警察当局が摘発した事件としては2016年5月、富山県警が傷害と監禁容疑で、山口組系暴力団幹部(69)ら4人を逮捕したケースがある。
事件が起きた原因は、2015年8月に山口組が分裂したことだった。山口組から離脱して結成された神戸山口組に合流しようとした組員の男性に制裁を加えるために行われた。逮捕された幹部らは2016年3月、組織を抜けようとしていた男性を車で拉致して連れまわし、富山市内の山中で暴行したうえ男性の指を切断する重傷を負わせていた。
山口組では2014年1月にも同様の事件で逮捕者が出ている。組を抜けようとした男性(27)を車で拉致して名古屋市内の事務所に連れて行き、男性の左手の小指をノミとハンマーを使って切断したとして、山口組系幹部(48)らが傷害容疑で逮捕された。
長年にわたって暴力団犯罪捜査を担当してきた警察当局の捜査幹部OBがこうした事件の背景について解説する。
「そもそもヤクザは何かしらの被害に遭っても警察には届け出ないものだ。しかし、(1992年に)暴力団対策法が施行されてしばらくすると、『ヤクザを辞めたい』という組員が多くなってきた。抜け出す際に指詰めなどの制裁にあったため、警察に相談に駆け込むケースも増えた。暴対法施行後は、指詰めを事件として摘発することが結構あった」
捜査幹部OBは、2011年までに全国で整備された暴力団排除条例の施行の効果が大きく影響していると指摘する。
「暴対法のうえに暴力団排除条例で、収入を確保できなくなってきただけでなく、スマートフォンを持てない、銀行口座を開設できないなど経済活動から排除されたため、ヤクザはさらに苦しくなった。それで『辞めたい』となって、指詰めなどの事件の摘発が増えているのだろう」
(肩書、年齢は当時)
(#2に続く)