暴力団業界で不始末をしでかした場合などに謝罪の意を表すことや、自らの誠意を示すために行われる「指詰め」。近年はこれまでに比べて、指を詰めることは少ないというが、さほどの不始末、不祥事ではなくともヤクザらしさを示すために、指を詰めたという暴力団幹部も存在している。

 そもそも指詰めは暴力団対策法で禁じられ中止命令の対象となる行為だが、いまだに暴力団の間では根強く残っており、一部の暴力団幹部は切断した指を瓶の中でホルマリン漬けにして保存することもある。こうした切断された指が警察の目に留まり、傷害や強要容疑で事件化されたこともあった。

自宅に並んだ「ホルマリン漬けの指」

 暴力団組織と同様に反社会的勢力の一員として警視庁など警察当局が常に捜査対象として監視し続けていた国内最大の総会屋グループ「論談同友会」の元幹部の指詰めの様子は「#1」で紹介した。

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 元幹部が指を詰める際に、右手で持った包丁を自らの左手の指に当てて後輩の総会屋に大型の灰皿で上からたたかせて切断したという。この際には、一度では切断できずに何度にもわたって灰皿で包丁をたたき続けた。

 この当事者たちとは別の論談同友会の元最高幹部は、「会長だった正木龍樹の自宅には、ホルマリン漬けになった切断された指が入った瓶がいくつかあった。論談には元々はヤクザだったという人が多くいたから、何かあったら指を切って持ってくることもあった」と証言する。

写真はイメージです ©iStock.com

「ホルマリン漬け」と聞くと、一般社会にとってみれば奇異な印象がある。だが、こうした点について、警察当局で暴力団犯罪捜査を続けてきた捜査幹部OBは、「さほど不可思議なことではない」との感想を語る。

「ヤクザの社会で、不始末があって指詰めをするのは、ただ黙って『指を詰めました』というだけではなく、切断した指を謝罪する相手に持参して“見てもらう”ということも重要なことのようだ。ホルマリン漬けの瓶がいくつも保存されているということは、ヤクザ社会ではある話だ」(同前)