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「ホルマリン漬け」が端緒で捜査

 ホルマリン漬けの切断された指が端緒となり捜査が始まり、傷害事件として立件にこぎつけたケースもあった。前出の捜査幹部OBが続ける。

「とある事件があって、首都圏に拠点を構える指定暴力団の事務所にガサ(家宅捜索)に入った。関係品の押収を進めていたところ、室内からホルマリン漬けとなった多数の瓶詰の切断された指が見つかった」

 不始末をしでかした若い衆たちが親分に差し出した、指詰めしたものだろうことは容易に察しがついた。

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「そこで、これは事件にできると考えて、瓶詰の指を押収して、ひとつずつ取り出して指紋を採取した。指紋を照合していき、元々の指の持ち主を割り出した。ほぼすべてが子分たちのものと判明した。

 親分が子分に対して、指を詰めろと無理強いした強要容疑や、体を押さえつけて指を切り落とした傷害容疑などで逮捕した。いくつかは起訴にまでは至らなかったが、どういった事情で指を詰めたのか取り調べで話をさせた。さらに、ヤクザとしての活動歴についても調書にまとめた。こうした点は意味があった」(同前)

写真はイメージです ©iStock.com

 ただ、こうした事件捜査で、暴力団事務所に大きな変化があったという。

「瓶詰の指を指紋照合した捜査を行った後は、この組織では瓶詰した指を保管しておくことはなくなった。系列のほかの組織でも、瓶詰の指を保管しないように連絡が行き渡ったようで、このような事件はその後、起きなくなった」(同前)

 昭和の時代にまで遡ると、すでに1987年2月に指詰めを強要することに有罪判決が下されていた。

 稲川会の組員(39)が宮城県石巻市内で準構成員の左手小指に出刃包丁をあてて、ハンマーでたたいて切断した事件について、仙台地裁は「たとえ被害者の承諾があったとしても、公序良俗に反する行為だ」と非難。他の事件の余罪と合わせて、その組員は実刑判決となった。

 体を押さえつけられて指を切断されれば傷害事件として成立する。本人が承諾した上で切断しても、仙台地裁が示した判決理由のように、社会的には容認されることはない。