甲子園を目指す各都道府県の地方大会が、熱気を帯びていく季節がやってきた。昨年はコロナ禍の影響で大会自体が中止されたため、夏の風物詩を2年間待ち望んだファンたちも多かったことだろう。そしてそんな中で活躍する一級品の素材を見極めるべく、独自の情報網に目を光らせているのがプロ野球のスカウトたちだ。

 今までスポットライトがあまり当たりにくかった、そんなスカウトの世界をリアルに描いた漫画が現在、人気を博している。自身も高校球児だったクロマツテツロウさんが描く『ドラフトキング』だ。「グランドジャンプ」(集英社)にて人気連載中で、単行本も既に8巻まで発売されている。

クロマツテツロウさん

 主人公の郷原眼力(ごうはら・オーラ)はプロ野球チーム・横浜ベイゴールズの敏腕スカウト。誰もが驚く選手の発掘や、隠れた選手の才能を見出すことで、その名を轟かせているが、奇想天外な行動で周囲は振り回されることもしばしば。そんな郷原や個性豊かな他のスカウトたちの姿が、新人スカウト・神木らの視線から描かれる。

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 現役・OB含めた複数のスカウトだけでなく、社会人野球の企業チームやクラブチームなどにも取材へ足を運んだと言うだけに、とてもリアルな背景や現実、それぞれの事情が描かれているのも人気の秘訣だ。

『ドラフトキング』主人公・郷原眼力(オーラ) ©クロマツテツロウ/集英社

「スカウトのプロ」にしか見えない視点がある

 実際のスカウトへの取材では「ベテランの方ほど(見るべきポイントは)佇まいとかユニフォームの着こなしとか、漫画で描きにくい話が多かったです」と笑う。一方で、様々な指標や数値を取ることができ、データ重視が強まっている今だからこそ、そうした「プロにしか見えない視点」こそが、スカウトという仕事に深みを与えている。

 

 実際、作品の中には「目の前の勝負に勝つために、自分を捨てる選択」をした選手に対し、それを見抜いたスカウトが「ブレるな」と諭す場面もある。ファンが観ている“結果”よりもさらに深いところでの「プロとして生きていけるかどうか」の査定も厳しく行われているのだ。