1890年代、ニューイングランドの孤島にやってきた二人の灯台守。反りがあわず衝突を繰り返す二人は、やがて嵐のため島に閉じ込められ、徐々に狂気の淵へ導かれていく。ウィレム・デフォーとロバート・パティンソンが反目しあう二人の灯台守を演じた『ライトハウス』は、異様な緊張感に満ちたホラー映画。ほぼ真四角に近いフレームで切り取られた白黒の映像は、おぞましさと美しさを同時に感じさせ、見る者を震わせる。

 監督は、長編デビュー作『ウィッチ』(2015)がサンダンス映画祭で上映され、新たな時代のゴシックホラーとして大絶賛された新鋭ロバート・エガース。長編二作目となる本作は、A24が製作・配給を手がけ、北米ではアート映画としては異例の大ヒットを記録した。『ミッドサマー』のアリ・アスター監督と並び今もっとも注目される現代のホラー映画作家ロバート・エガースは、どのようにしてこの古風でありながら斬新な映画をつくりあげたのか。

ロバート・エガース監督 © 2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

まず思い出したのは「かつて見た古典映画」だった

――『ライトハウス』を見ると、昔のサイレント映画や、トーキー初期のさまざまな作品が思い浮かびました。監督は、この映画をつくるうえでジャン・エプシュタイン、F・W・ムルナウ、G・W・パプストなど1920~30年代の映画をたくさん参照されたそうですね。

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ロバート・エガース 映画の発端は、弟のマックス(・エガース)が灯台を舞台に書いたゴーストストーリー。僕がその話を読んでまず想起したのは、白黒で少し古びた感じの画でした。正方形っぽいサイズで撮られていて古臭いフィッシャーマンセーターや葉巻やパイプが登場する。まさに自分がかつて見た古典映画のイメージでした。ただし弟自身が持っていたイメージは僕のそれとはまた違うものだったらしいけど。映画をつくるうえでは、自分が思い浮かべた匂いや空気を出すために、こうした過去の映画がおおいに参考になりました。