俳優は一発勝負。「その瞬間」の演技で結果を出さないと
――撮影で何か印象に残ったことがあれば。
播戸 (本番前に)控え室に通されて、そこには出番を待つ渋川(清彦)さん、早乙女(太一)さんたちがいて空気がピンと張り詰めていました。みなさん役に入っているというか。ちょっとその場にいづらくて、たまらず外に出てしまったんです。
――控え室の外でじっと待っていたわけですか?
播戸 いや、賭け事のシーンを指南してくれる方が喫煙所のほうにいたので「どうやったほうがいいですか」とかいろいろと聞いていました。
――さすがはストライカー、貪欲ですね。サッカーの試合前とはまた違いますか?
播戸 サッカーは普段みんな一緒に練習していますから、試合前でもリラックスした雰囲気になることが多いんです。ガンバで天皇杯優勝やACL優勝も経験しましたけど、決勝だからと言ってあそこまでの緊張感はなかったと思うんですよ。映画の場合は知り合いじゃない人もいるわけじゃないですか。それに一発勝負。「この演技が評価されたら、また次の仕事のオファーが来るかもしれない」っていうのがあるんじゃないかなって思うんです。
プロサッカー選手は1年とか2年とかの契約になりますけど、俳優さんたちの世界は違う。スポーツの世界も厳しい世界だけど、俳優さんたちは本当に「その瞬間」の演技で結果を出さないといけない。だから現役時代には感じられなかった雰囲気を味わうことができたとは言えます。撮影をしていくなかでも、もし1人でも監督が良くないと判断したら撮り直しになる。新人の自分がミスして、みなさんに迷惑を掛けることだけは避けたかった。その緊張感があった分、逆に集中もできたのかなとは思いますね。
――撮影が終わってから、白石監督からは何と?
播戸 「良かったです。次はセリフつきでいけるかもしれないですね」と言っていただいて。リップサービスだとしてもうれしかった。エキストラのみなさん、ここで終わりですとなったときに松坂さん、斎藤(工)さんたちに「お疲れさまでした」と言っていただいたこともうれしかったですね。