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「ACLの決勝でもあそこまでの緊張感はなかったです」 元サッカー日本代表が“ヤクザ映画”に出演して感じた「役者の凄み」

播戸竜二さんインタビュー #1

2021/07/04
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「機会があるならお願いします」と伝えていた映画出演

――そもそも今回の映画に出演することになったきっかけを教えてください。

播戸 僕が現役のときからお世話になっている方と東映のプロデューサーの方が幼馴染で、僕が2018年限りでFC琉球を退団して、翌年東京に来たときに一度3人で食事させてもらったことがあったんです。そのときに映画出演の話になって、二つ返事で「機会があるならお願いします」と伝えたんです。そしてその年の夏に、『孤狼の血 LEVEL2』の話をいただいて。前作を見ていなかったので、ちゃんと見たら凄く面白かったですね。ただ、どんな役なのかは知らされていなかったので、多分すぐに殺される役なんじゃないかって勝手に思っていました(笑)。

 

――「賭場の客」での出演はいつ知ったんですか?

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播戸 映画の台本が送られてきて、賭場の客に僕の名前が書いてあったので。もう興奮しましたね、これが映画の台本なのかって。生まれて初めて見ましたから。(台本は)その日のうちに読み終えました。どんな映画になるのか頭のなかでイメージして、知らない俳優さんの名前が書いてあったらネットで検索したりして。

――先に全体をイメージしておくのは、サッカーでもやっていたことですよね。

播戸 ガンバ時代、西野(朗)監督はメンバーのことをよく「キャスティング」って言ってたんですよ。「きょうはこういうキャスティングで行くぞ」とか「相手はこういうキャスティングだ」とか。僕たちは試合前に一度イメージしていくわけです。味方がこうで相手がこうだからこんな展開になりそう、と。

 

メチャメチャ好青年の俳優・杉田雷麟くん

――イメージを持って、撮影に臨まれたわけですね。しかしながら俳優デビュー戦で、知り合いもいない。完全アウェーと言ってもいいというシチュエーションです。

播戸 広島まで新幹線で行って、そこから呉までバス移動でした。確かに誰も知り合いなんていないんですけど、雰囲気を見たらこの人絶対、出演者やろうなって何となく分かるんですよ。バスに乗って僕の隣に座った高校生くらいの人に挨拶したんですよ。「お兄ちゃん、若いね。何歳なん?」と聞いたら「17歳です。杉田雷麟と言います」と。そうしたら僕のマネージャー代わりで一緒についてきてくれた人が「よく映画とか出ている人ですよ」と教えてくれて、えっ、そうなの? と。

 雷麟くん、メチャメチャ好青年でいろいろと助けてもらいました。撮影前に控え室を出て外で待っていたときも、話し相手になってくれましたから。僕、新人なんで何せわからないことだらけなんで(笑)。これは撮影のときじゃないんですけど、衣装合わせのときに失敗してしまったことがあったんです。