久しぶりに2人で将棋を指すのは楽しかった
次女を出産してから、2人で将棋を指す回数はグッと減った。互いに自分の勉強時間を確保するのがやっとで、将棋を指すまでに至らないのだ。
2人とも詰将棋が解きたい時があれば一緒に解いたり、人の将棋の中継を見て「ここはこうだね」という会話をしたりすることはあったが、それはどちらかというと勉強よりもコミュニケーションに近い。
もともと、将棋の研究や勉強は相手に口を出さないので、ここしばらくは同じ空間にいても、それぞれの盤に向かう時間が続いていた。
私は大学受験を実際に経験していないので、適切な表現かは分からないが、別々の大学を一緒に目指して勉強している感覚に近いのではないかな、と思う。
最近になり、不本意な対局内容が2人とも続いた。原因は実戦不足である。
互いに原因を自覚しているため、「将棋を指しますか」となった。とりあえず手軽な所に対局相手がいるのは、将棋指し夫婦の利点である。
久しぶりに出番を得た対局時計の「ザ・名人戦」は無事に電源が付いた。これがないとしっくりこない。時間設定はいつもの10秒にした。
最初の数局は互いに散々な内容だったが、久しぶりに2人で将棋を指すのは楽しかった。
そして私達の間では、また10秒将棋がちょっとしたブームになっていて、実戦不足も以前よりかは解消された。
夫に勝った時に顔がにやけるのを止められないのはなぜだろう
夫婦間で勝負事をするのは、争いの種になりやすいかもしれないが、私達は根っこの一部が将棋でくっついているから、これが自然な形なのだろう。
恋人であり、将棋仲間だった15年前から、今は夫婦であり、母であり、夫であり、いくつか役割は増えて、棋士や女流棋士としても、人生としてもいろいろとイベントが発生した。
けれどやはり、将棋仲間であることは変わらない。
互いに引退するまで、ここだけはこれからも変わらなければいいなと思う。
累計対局数はいま、何千局くらいだろう。2人で1万局の大台を指せるだろうか。せっかくだから対局数だけでも残しておけばよかった。
それにしても何局指しても、夫に勝った時に顔がにやけるのを止められないのはなぜだろう。通常の対局で勝つ方が嬉しいハズなんだけどなぁ。
最後に、この連載も今回で1年を迎えました。
「観る将アワード2020/2021」ではこのコラムをきっかけにベストエッセイスト賞をいただき、大変嬉しく、励みになりました。読者の皆さまにはいつも温かくお付き合いいただき、心より感謝申し上げます。
「観る将棋、読む将棋」の中で異質のコラムだなと、更新される度に自分でも思いますが、今後も緩くお付き合いいただけると嬉しいです!