昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

負けを引きずらない私が「それでも白玲戦の1敗は少し引きずった」理由

いよいよ本当の意味の順位戦が始まる

2021/06/03

 湿度がグッと上がり雨が降る日が増えたので、関東もとっくに梅雨入りした気になっていたが、どうやらまだしていないらしい。私は梅雨の時期がどうにも苦手で、気圧やらどんよりと重い空模様やらが、全力で瞼にぶら下がってくる。ただでさえ毎日眠いのに、輪をかけて眠くて眠くて、眠すぎる。

 そんな母を傍目に子どもたちは、カッパを着込み、長靴を履いて、全力で雨を満喫する。

 長靴の中に雨が入って、脱いだ方がマシなのでは?と思うほど、水溜まりをジャンプしたり、びしょ濡れになりながらカタツムリを探しにお散歩したり、この時期にしか出来ない体験も確かにあるのだ。

 子どもの頃の自分はどうだっただろう。こんなに雨の日を楽しめていただろうか。

梅雨を制する者は1年を制す

 昨年は梅雨明けが平年よりも遅く、将棋もだいぶ苦しんだ。成績にも正直すぎるほどに反映されて、7月に6連敗した。

 今年は私のカッパも購入済みだ。梅雨を制する者は1年を制す。苦手なものも、楽しめるようになりたい。

雨の日の子どもたち ©️上田初美

 以前にこの連載でも触れた、第1期ヒューリック杯白玲戦の順位決定リーグが5月で終了した。

 6-1でF組2位という結果で、「初代白玲」の可能性は潰えてしまった。しかし今期は来期のリーグ及び、順位決めも含まれているため、ここから順位決定トーナメントが行われる。

 タイトルの可能性がなくなった後に、順位をモチベーションにするというのは、今まであまり経験してこなかったので少し不思議な感覚である。

 このトーナメント次第で、まだ来期のA級入りの可能性が残されている。そしてA級に入らなければ自動的に、来期の白玲への可能性もなくなってしまう。

昨年11月13日に行われた、ヒューリック杯白玲戦の開幕戦(提供:日本将棋連盟)

将棋界において、「負け」はあまりにも日常にある

 産休・育休時代にも感じたことだが、自分がいない場所で挑戦権を争われるのを傍観するというのは、上を目指している人にとって、精神的に辛いものだ。他の人が勝つのを見るにしても、戦って負けたい。その方が気持ちの置き所がある。

 できればA級に入っておきたいというのは、誰しもが思うことだろう。

 少し話は変わるが、私は負けをあまり引きずらない方だと思っている。

 もちろん、もともと負けず嫌いではあるのだが、負けず嫌いしかいない世界においては、その度合いは低い方、という意味だ。

 将棋界において、「負け」はあまりにも日常にある。そしてそれが長く続いていくため、1つ1つにダメージを受けていては、いずれ疲れてしまう。

「弱かったから負けた。勝ちたかったら次、頑張ろう」という、勝負師の中では比較的軽いスタンスで将棋を指している。

 よって、勝って喜び、負けて悲しむということは、それほど多くない。

 しかし、それでも白玲戦の1敗は少し引きずった。