梅雨が始まり、少し出掛けるにも急な雨に備えて、雨具が必要になった。

 前回のコラムでも触れたが、娘たちは雨の日にはここぞとばかりカッパを着て長靴を履き、外で遊びたがる。

 つい先日も、バケツをひっくり返したような土砂降りが過ぎ去ったのを確認し、いそいそと準備し、公園へ向かった。当然一面水浸しなのだが、子どもはむしろそれが特別に感じるらしい。

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 存分に長靴で水溜まりを闊歩したのち、娘たちが私に放った言葉は「長靴脱いでいい?」だった。中に水が溜まっている長靴を脱ぎ捨て、素足で水溜まりに入り、遊び疲れて文句を言われながら帰路につくのが定跡になりつつある。定跡はいつも、実戦の積み重ねで作られていくのだ。

水溜まりをのぞき込む次女 ©上田初美

いわゆる「10秒将棋」をひたすら指した

 6月17日は私達夫婦の結婚記念日だった。

 結婚したのが2013年だから、丸8年が過ぎた。おまけに私達は交際期間が7年と長く、合わせると15年という年月が経っている。

 どんな時間も、振り返ろうとすると「もう」と「まだ」が同時に浮かび上がるが、15年はそれなりに積み重ねてきたと、さすがに実感する。単純計算で再来年には、私の人生の半分を夫と共に過ごすことになるのだ。

 夫と初めて会ったのは小学3・4年生頃だったと思う。よって私達の関係の初期設定は幼馴染に該当する。が、初めて会話らしい会話を交わしたのは、私が高校3年生になった頃。夫は奨励会三段、私は女流棋士の初段だった。

 この頃の思い出は、将棋を指したことに尽きる。おそらく、というか当然、将棋以外でも遊んでいるハズなのだが、あまり覚えていない。

 持ち時間が1手10秒の、いわゆる「10秒将棋」をひたすら指した。それこそ最初の1年で1000~2000局は指したと思う。勝率は今も昔も、私の調子の良い時は4割、悪い時は2割といったところだろうか。

 唐突に「100番勝負やろう」と言って将棋を指すこともあった。紙に結果を書いていくのだが、途中から面倒になって、100番勝負は一度も決着はついていない。

「名人戦」などの名前を借りて、すべてのタイトル戦を2人で行ったこともあった。当然「名人戦」は七番勝負で、上位者に4回先に勝つのはなかなかに厳しい。どれだけのタイトルを取られたのかは覚えていないが、新人王戦を取ったことは覚えている。

 私達はこの頃から、恋人であり、将棋仲間だった。