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「家がぐわんと持ち上がって、そのまま流れていって…」熱海土石流災害“1日で平穏な日常がふっとんだ”被災地は陸の孤島に…

「家がぐわんと持ち上がって、そのまま流れていって…」熱海土石流災害“1日で平穏な日常がふっとんだ”被災地は陸の孤島に…

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「泥水の津波」のような土石流

 前出の避難所の高齢男性が続ける。

「午前10時半頃に急に停電しました。それから15分くらいすると、救急車やパトカーのサイレンの音がし始めて。その後、2、3回かな、すごい音がした。僕は最初、風の音だと思ったんです。ターボエンジンのヒューという音とジェット機のゴーという音を混ぜたような、これまでで初めて聞く音。『今日はすごい風の音がするんだなぁ』と思っていた。

土石流に飲み込まれた家 ©️時事通信社

 それで、ふと外を見たんです。茶色い山肌を見ていたら、泥水の津波のような土石流がすごい勢いで流れてきました。うちから数メートル先の家がぐわんと持ち上がって、そのまま流れていって……。『これはまずい』と思って、慌てて避難してきました。『停電になっちゃったな』とのんびりしていたところから、『これはまずい』と思うまでの切り替えが難しかった。『災害ってこういうものなのか』と初めて思いました」

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約50人が避難している熱海中学校 撮影・上田康太郎 ©文藝春秋

「車がおしつぶされるほどの勢い」

 逢初川の下流で土石流を目撃した別の男性は「何度かに分かれて、岩や家の一部が、とんでもない勢いで流れてきました。速度もあり、車がおしつぶされるほどの勢い。近隣の知人宅は流されてしまい、連絡がつかない人もいるのでとても心配です」と話す。

「50年以上、この地に住んでおり、時折大雨が降るので今回もそこまで気にすることはなく、朝、家を出て仕事に向かいました。それがこんなことになるなんて…。このあたりは車でないと移動するのが大変なくらいアップダウンが激しいため、大きな災害になってしまったのでしょうか。でも、なぜ近くに山や斜面はたくさんあるのにこの1箇所だけ、こんなことになってしまったのか」