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「夜の仕事は全部やったかな」30代後半の援デリ嬢が、部隊の“稼ぎ頭”だったワケ

2021/07/07
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 第1に、「管理型個人売春」。これはいわゆる肉体関係を伴う愛人・援助交際・パパ活・ワリキリ・立ちんぼなどの「個人売春」に対して、業者が介入して男客の仲介(客付け)とケツモチ(トラブルがあった時に出張って対処すること)を請け負うことで、キャストの安定収入とセキュリティをある程度担保するもの。『アンダーズ』の舞台である援デリはここに該当する。

 第2に、「ボーダーライン風俗店」。これは風俗店(主に派遣=デリヘル)のスタイルを踏襲しつつ、サービスが性風俗店では違法とされている本番行為(性器の挿入)を中心とするもの。どこまで店が介入しているかによってブラック(嬢に本番を奨励し、その分客から料金を取る)からグレー(嬢が個人的に本番をすることを黙認)まであるが、おもてから見る分には一般の性風俗店だ。

 第3が、「他業種偽装」。これは性風俗以外の業態、例えば飲食店などで客と性交渉することを管理するスタイルで、JK産業の強制裏オプ、ホステス女性の店外連れ出しをサービスに含めているパブ・スナックや、かつて存在した「1階は飲み屋、2階に布団」の売春宿、死滅産業の域かもしれないが、温泉地におけるピンクコンパニオンの裏サービスなどまでが、ここに含まれるだろう。

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ボーダー風俗とブラック性風俗の融合で生まれたのが援デリ

 援デリは第1の業態だが、その発祥をさかのぼれば、ネオン街に隣接するホテル街などの路上で個人的に買春客を引く立ちんぼの女性に対し、地回りの不良やそこにコネクションのある立ちんぼOGの女性が女衒(ぜげん)として介入して、客付けとケツモチの代わりにショバ代を納めさせたことにある。

 昭和~平成中期における時代は「他業種偽装」「ボーダーライン風俗店」の業態が中心だったが、歓楽街の浄化作戦や時代の推移があってそれらは衰退。一方で路上ではなくネットを介した買春客の客付けが可能になったことと、行き場を失うブラックな性風俗店(第2)が融合する形で生まれたのが、援デリだったと言える。(後編に続く)

アンダーズ〈里奈の物語〉 1

鈴木 大介 ,山崎 紗也夏

文藝春秋

2021年6月24日 発売

「夜の仕事は全部やったかな」30代後半の援デリ嬢が、部隊の“稼ぎ頭”だったワケ

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