いわゆる管理売春には「管理型個人売春」「ボーダーライン風俗店」「他業種偽装」という大きくわけて3つの分類がある。『アンダーズ〈里奈の物語〉』で描かれる「援デリ」は、このなかでは管理型個人売春に分類される。そして、性風俗店と管理売春(特に援デリ)には、決定的な差が5つほどある。(全2回の2回め/前編を読む)

©️iStock.com

性風俗店と管理売春、決定的な5つの差とは

(1)糞客、NG客の管理が困難(セキュリティ問題)

 あくまで個人売春を装う援デリには、一般の風俗店を出入り禁止になっているような(一般の女性とパートナーシップを結ぶのも難しいような)、暴力や違反プレイの常習者、性器が大きすぎて女性にけがをさせかねない者、盗撮癖、性病の放置等々の問題を抱えた客も流入してくる。

ADVERTISEMENT

 あくまで集客に「個人・素人」を標榜しているため、被害を未然に回避することが難しい。問題が起きたのちに業者が買春客を詰めることはあるが、個々の業者に横のつながりやセキュリティ面の業界基準がないため、NG客の情報共有がなく、むしろ個々の業者が情報を抱え込む。後述するが、未成年援デリ独自の“糞客”も存在する。

※『アンダーズ〈里奈の物語〉』1巻では、主人公が4時間戻ってこないのを打ち子の長峰がのんきに放置しているシーンがあるが、これは長峰が「糞打ち子」の事例。風俗店だったら大騒ぎだ。

『アンダーズ〈里奈の物語〉』第1話より ©文藝春秋

(2)身体(女性器)の消耗

 性器の挿入を前提とする援デリでは、1日4本5本と客を取る中で、確実に女性器が消耗する。風俗のような事前のプレイ行為を学ぶ機会がなければ、客対応は挿入しかないのが、その最大の理由。事前に潤滑剤を性器に仕込ませたり、鎮痛剤などで対処するも、消耗の度合いは身体的な個人差が大きく、「寝ているだけでいいから楽」と言えてしまうような身体的に優位なキャストとの格差が生じやすい。

(3)福利厚生が皆無

 生理休暇、定期的な性病検査、客がつかなかった日の日給保証といった福利厚生がほとんど存在せず、むしろ性病検査のために成人の保険証をレンタルするのに全額負担の診療費以上のレンタル代を課すようなひどすぎる業者も。

(4)部隊の存続性の低さ

 客付きの安定性、キャスト女性の安定確保、他業者との縄張り争い、地場ヤクザの介入、関係者の逮捕(OG少女の補導なども含む)などの外的要因が多すぎて、同じ援デリ部隊が長期に存続できず、すぐ解散。その都度キャスト嬢は条件の違う打ち子のもとを渡り歩くことになる。

(5)「矜持」をキープしていられる期間が短い

 以上が、性風俗店と管理売春の主な差だ。