で、さっそく「肉ねぎそば」を注文
さっそく人気の「肉ねぎそば」を注文した。店の右一番奥のカウンター下にホットプレートが置いてあり、その中に豚コマ肉と長めに切ったネギがじっくりと煮込んで温められている。それをつゆをはったそばにのせて、きれいな青ネギをのせて登場する。
トロトロに溶けたネギの甘みがジンワリと広がり、よく煮込まれた豚肉とつゆに馴染んでなかなかよい。少し七味を入れて味変するのもよい。
「肉ねぎそば」を食べていると、厨房側に大きな寸胴があって、スープのようなものをグズグズと煮込んでいるのを発見した。
若主人に聞いてみたところ、カレーのスープベースだそうだ。豚肉や野菜をホロホロになるまでまる一日煮込んで夜にカレールーを合わせ、一晩寝かせて翌日提供しているという。一日以上かけてカレーを作っているのだ。そう聞くと頼まないわけにはいかない。「ミニカレー」250円を追加注文。ミニといっても結構量がある。程よくスパイシーで色は黒っぽいカレーである。カレーに「肉ねぎそば」の豚肉やネギを留学させて食べてみると、これもいける。福神漬けはお好みで入れる。
女将さんと話しながらのんびり食べていると、若い男性客が入ってきた。カレーの大盛りを頼んでいる。女将さんと仕事の愚痴みたいなことを話しながら、ガツガツ食べている。
競馬新聞を持ったお爺さんがやってきて注文も言わず座っていると、若主人がきつねそばを作って提供して、それをゆっくりと食べている。皆、常連さんなのだ。
「ファミリー」には緩やかな時間が流れていて、それをお客さんも共有している。「ファミリー」で食べていると、なんとなく家の食卓でそばやカレーを食べているような錯覚を覚えてしまう。だから「ファミリー」という店名なのだろうなと勝手に納得してしまうわけである。
「ファミリー」の味は続くのか?
千歳烏山の南口一帯は4年後にはバスターミナルや駅ビルができて、駅も高架になり大きく様変わりしてしまうそうだ。今ある心地よい裏通りも消えてしまう。女将さんも今後どうなるのか周りの商店街の人ともよく話しあっているそうだ。今の「ファミリー」の味が続くことを祈るばかりだ。
千歳烏山には、そば愛好家には有名な称往院、別名そば切り寺がある。近隣に住んでいた徳冨蘆花は、「停車そば」(今の駅そば)を好み、地元のうどんをよく食べていたという。千歳烏山界隈の週末散歩にも「ファミリー」は心地よい。
写真=坂崎仁紀
ファミリー
世田谷区南烏山5-11-7
営業時間 10:30-20:00
定休日 水曜日