国道246号線の大和厚木バイパスは、旧厚木街道と交差する。一帯には、工場や搬入搬出のためのトラックステーションなどが並ぶ。そのバイパスの高架線の南側に、広い駐車場のあるコンクリート打ちっぱなしの小さなそば店が営業している。そば処「あさひ」である。

コンクリート打ちっぱなし、ポストモダンな「あさひ」外観

野郎もガールも朝5時半の開店を待っている

「あさひ」は朝5時半に営業を開始する。駐車場は営業前から開放されているので、たくさんのトラック野郎や最近はトラックガールも店の開店を待っている。広い駐車場には、運転手のための休憩所もあるし、そばを食べなくても休憩に使うこともできる。ありがたいサービスだ。

 昼は近隣の住人や家族連れがワイワイそばを食べに来る。来店者が一日に千人を超えることもある。そして午後4時前には閉店する。

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「あさひ」は、ビジネス雑誌やテレビなどでも「遠隔地なのに客が殺到する店」としてしばしば取り上げられている。なぜそんなに集客できるのか、自分も何度となく調査という名目で食べに行った。そしてわかった。この店の秘密は、サブメニューにあったのだ。

バイパス高架下に店はある

「出汁ポット」とは何か

「あさひ」はまず、そばつゆが秀逸だ。つゆには浄水ろ過フィルターを使う。本枯れかつお節をふんだんに使って追いがつおまでしてとった出汁はふくよかで奥深い。

 そばを受け取るところに、自家製辛味噌や薬味がたくさん置いてある。その端に、ポットがさりげなく置いてある。「出汁ポット」だ。美味しいから是非出汁も飲んでもらいたいと、女将さんの座間弘美さんが提案したアイデアだ。

だし汁です、と書かれた「出汁ポット」

 これをそば猪口に入れて、飲んでもよし、そばをつけて食べるもよし、サイドメニューのミニしらす小丼(280円)にかけてお茶漬け風にするもよし。

 通常のそば屋では、そば湯は出しても、お店で使ういわば企業秘密の出汁までも、誰でも味見できるように提供するといった太っ腹なことは絶対にしないと思う。そのあっけらかんとした惜しみないサービスが「あさひ」の人気の神髄である。