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 それまでも洞窟内での撮影はしていたが、水の中にライトを入れて撮ったのは、この銀水洞がはじめてだった。

沖永良部島の銀水洞。この洞窟との出会いは筆者の記憶に強く残っている ©吉田勝次

「もっといいカメラが…」「もっとちゃんとしたライトを…」

 その後、オレの写真熱は取り憑かれたように一気に高まり、「もっといいカメラがほしい」とボディだけで30万円、レンズを含めると合計100万円ぐらいかけて、カメラを新調。さらに「もっとちゃんとしたライトを使えば、ものすごい写真が撮れるはず」と、1灯5~6万円もする撮影用の防水照明にも触手を伸ばした。

 プールの数からすれば、理想は30個ぐらいほしかった。しかし、6万円×30個=180万円を一度に出費することは、さすがのオレでも難しかったので、自分で買い揃えたり、まわりの洞窟仲間に「お前も買えよ!」と買わせたりして、すこしずつ数を増やしていった。

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 また、最初のときはオレ一人だったので、ただ景色を撮るだけだったが、「モデルがいたほうがスケール感がわかるはず」と、ガイド講習のたびに講習生を銀水洞に連れていき、撮影するようにもなった。

機材は消耗品だが、最高の1枚を撮るために良いカメラを持っていきたい ©吉田勝次

 撮影中は講習そっちのけで、現場監督のように「お前はそこに立て!」「お前はあそこだ!」と講習生にビシバシと指示を出し、パシャパシャとシャッターを切り続けた。講習生は水に浸かってずぶ濡れ状態だったので、しばらくすると寒くてブルブル震えてくるのだが、彼らが動くと写真がブレてしまうので、オレはカッカして「お前ら、動くな!」と怒鳴りつける始末。相当にひどいことをしていたなと、今ではちょっと反省している。