1ページ目から読む
5/5ページ目

 そのときの撮影がまたすごかった。テレビ番組なのでそれなりに予算もあり、これまでにないぐらいの数の照明を持っていくことができたのだ。そんな膨大な照明で照らした銀水洞の景観というのは、何度も入っているオレ自身でさえもはじめて見るもので、

「やっぱり、ここはすげぇ……」

 とあらためて感動し、絶句してしまった。

ADVERTISEMENT

「再発見」した沖永良部島の銀水洞。水の上に顔だけ出して通るような所もあり、ガイドが一緒でないと行けない ©吉田勝次

 そのとき、ディレクターから出た言葉は今でも忘れられない。

「吉田さん、申し訳ありません。このすばらしい景色を僕らの番組で使わせてもらえるのはありがたいんですけど、オンエアでは1コーナーで使うだけなんです。こんなすごい景色を1コーナーだけというのはほんともったいないし、紹介してくれた吉田さんには申し訳ないという気持ちしかありません……」

 1コーナーだけだったとはいえ、島の人たちはオンエアをすごく楽しみにしていたし、実際に番組を見ることで、それまではきっと「洞窟があるな」くらいの認識だったのが、「自分たちの島の地下にこんなすごい世界が広がっていたんだ!」と沖永良部島の洞窟のすばらしさをはじめて知ることができたんじゃないだろうか。その意味で、テレビの影響力はものすごいと思う。

写真や映像の重要性

 こうした一連の広がりを体験するにつけ、オレが実感したのは「写真や映像の重要性」だ。洞窟に潜り、「こういうところに行ってきました」「こんなすごい景色があります」といくら言葉で力説しても、実際にその場にいなかった人にはなかなか伝わらない。しかし、1枚の写真やちょっとした映像があれば、すぐに興味を持ってもらえるし、「自分も行ってみたい! 見てみたい!」「守らないと!」と思ってもらえる。

「自分がやるべきは、洞窟ですごい写真を撮って、一人でも多くの人に見てもらうことなんじゃないか」

 そのころからそんなことを真剣に考えるようになっていった。