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「この写真、役場のポスターに使っていいですか」

 ちなみに、講習のときに毎回銀水洞で撮影していたことを、講習生の一人が役場の担当者にぽろっと漏らしたらしく、あるとき担当者から「講習中の撮影はなるべく控えてください」と注意を受けたことがあった。「マズい」と思ったオレは、

「洞窟内での写真撮影も、ガイドにとって必要なスキルなんです」

 とか言ってごまかしたのだが、この言い訳はあながち噓でもない。

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 お客さんを洞窟に連れていき、その非日常的な空間できれいな写真を撮ってあげることができれば、お客さんが喜ぶことは間違いない。その写真は、きっと一生の思い出になるだろう。また、寒がる講習生を無理やり立たせて撮った写真が、のちのちさまざまなところで実を結ぶことになる。

 最初は役場から「この写真、役場のポスターに使っていいですか」と頼まれた。もちろん断る理由は何もないので、即OKした。その後、島の銀行からやはり「ポスターに使いたい」という依頼が来た。そのときも「島の人の役に立つならば」と、無料で写真を提供した。そんな風にオレが撮った銀水洞の写真があちこちで使われるようになったのだ。

 さらに、講習を修了した島の新人ガイドたちがホームページなどを作るときにも銀水洞の写真は大活躍した。島外の人たちに沖永良部島の洞窟の魅力を伝えて、「行ってみたい!」と思ってもらうには、どれだけ言葉を書き連ねるよりも、1枚のきれいな写真のほうが何十倍何百倍もの圧倒的な説得力を持つ。その意味で、銀水洞の絶景写真は、洞窟ツアーのメインビジュアルとして最高の素材だった。寒い中、モデルをさせられた苦労がここに来てついに報われたわけだ。

大山水鏡洞。ここまでは初心者でも簡単に行ける。身近にこんな美しい場所があることをぜひ知って欲しい ©吉田勝次

島の人の認識まで変えた瞬間

 極めつきは、そのころすでにテレビ番組の撮影サポートの仕事をちょくちょくしていて、その伝手(つて)で銀水洞の写真をテレビ局のディレクターに見せたところ、テレビの取材まで来てしまったことだ。それはTBS系列の『飛び出せ!科学くん』という番組で、そのオンエアを通じて銀水洞はついに全国区になる。