20代後半で洞窟にのめり込み、今まで入った洞窟は国内外含め1000以上という洞窟探検家・吉田勝次氏。そんな吉田氏は、特に思い出深い場所のひとつとして沖永良部島をあげる。ケイビングガイドの育成と認定を行なうようになったきっかけの地であるだけでなく、島民でさえ知らなかった「奇跡の洞窟」を“再発見”した地であるからだ。
鹿児島県の奄美群島の南西部に位置する沖永良部島で出会った「奇跡の洞窟」について、『洞窟ばか~すきあらば前人未踏の洞窟探検』(扶桑社新書)より、一部を抜粋して引用する。
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よみがえった奇跡の洞窟「銀水洞」
話を沖永良部島に戻そう。
この島がオレにとって思い出深い場所である、もう一つの理由。それは「銀水洞」というすばらしい洞窟を“再発見”できたためである。ガイド講習をするために沖永良部島の主要な洞窟にひと通り入ったことはすでに話したが、銀水洞もその一つだった。
ただ、1回目に行ったときには、何の魅力もない普通の洞窟だった。唯一、目に留まったことと言えば、巨大なホールの底にリムストーンプール(棚田)がたくさんあったことぐらい。「ここに水がたまったらきれいだろうな」とは思ったが、実際には泥がたまってぐちゃぐちゃしているだけで、きれいでも何でもなかった。
「広い空間があるだけで、ほかには目を引くようなものは何もない」
それが銀水洞の第一印象だった。
ところが、講習の事前調査のため、ふたたび銀水洞を訪れたとき、その場にひっくり返るぐらいにビックリした!
なんと、ドロドロぐちゃぐちゃだったホールのリムストーンプールのすべてに、透明できれいな水がたまっていたのだ。まわりの鍾乳石も、前回訪れたときは完全に“死んだ状態”だったのが、真っ白な“生きている状態”によみがえっていた(鍾乳石を「生きている」「死んでいる」と言うのは洞窟をやる人間の独特の表現。「生きている」とは、地下水に含まれるカルシウムなどによって表面が常にコーティングされて、真っ白できれいな状態がキープされていること。「死んでいる」とは、水が涸れた洞窟で汚れたままの状態になっていることを指す)。
生まれ変わった銀水洞をこの目で見たとき、オレは沖永良部島に来てはじめて、「すごい!」と腹の底から感動した。